利用報告書
課題番号 :S-20-JI-0001
利用形態 :機器利用支援
利用課題名(日本語) :固体NMR法による糖鎖の構造解析
Program Title (English) :Structural analysis of carbohydrates by solid-state NMR measurements
利用者名(日本語) :山口芳樹
Username (English) :Y. Yamaguchi
所属名(日本語) :東北医科薬科大学薬学部
Affiliation (English) :Fac. Pharm. Sci., Tohoku Med. Pharm. Univ.
1. 概要(Summary )
糖鎖は、一般に内部運動の自由度に富み、その立体構造は溶液中で絶えず揺らいでいる。そのため糖質の立体構造解析は十分に行われていない。本研究では、グルコサミンおよびリビトールを対象に、固体NMR法を用いた構造解析に取り組んだ。
2.実験(Experimental)
利用装置:核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置 Bruker Avance III 500
グルコサミンおよびリビトールを対象にCP/MAS法による固体13C NMRスペクトル計測を実施し、構造情報の取得を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
多くの複合糖質や多糖類に含まれるシアル酸やアミノ糖類の一般的な代謝前駆体であるグルコサミンをモデルとして、固体NMR計測を通した配座解析に取り組んだ。固体13C NMR測定によって得られたグルコサミンの構造情報に基づいた量子化学計算を行うことで、水酸基に関する各種NMRパラメータを推定することに成功した(Figure 1)。固体NMR計測で得られるこれらのパラメータは、僅かな二面角の変位に敏感に反応することが知られており、詳細な構造情報取得に有効な手法となると期待される。
一方、リビトールの溶液および固体13C NMRスペクトル解析から、リビトールはいくつかの非対称な構造を安定構造とし、溶液中では各構造をすばやく遷移していることが示唆された。リビトールは、グラム陽性菌のタイコ酸の構成成分として報告されていたが、最近になり哺乳類のジストログリカン上のO-マンノース型糖鎖においても発見された。リビトールリン酸転移酵素の遺伝的な機能不全は筋ジストロフィー症の原因となることが示されており、リビトールがどのような動的構造を示すのかは医薬学的にも興味がもたれる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は、山口拓実博士(北陸先端大)らとの共同研究として実施しました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
<論文発表>
K. Yamada, Y. Yamaguchi, Y. Uekusa, K. Aoki, I. Shimada, T. Yamaguchi, K. Kato, “Solid-state 17O NMR analysis of synthetically 17O-enriched D-glucosamine,” Chem. Phys. Lett., 2020, 749, 137455.
<主な学会発表>
大野詩歩、真鍋法義、山口拓実、鵜澤 洵、山口芳樹「非環状糖鎖成分リビトールの動的構造解析」日本薬学会第141年会(オンライン)、ポスター発表、2021年3月29日
6.関連特許(Patent)
なし