利用報告書

塗膜の界面状態評価手法の検討
里川 雄一
DIC株式会社

課題番号 :S-16-KU-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :塗膜の界面状態評価手法の検討
Program Title (English) :Characterization of the surface and interface of coating films
利用者名(日本語) :里川 雄一
Username (English) :Yuichi SATOKAWA
所属名(日本語) :DIC株式会社
Affiliation (English) :DIC Corporation

1.概要(Summary )
種々の溶媒に対する樹脂塗膜の耐性を議論する上で、溶媒に接した際の膜の最表面の官能基の配向変化を捉えることは、溶媒耐性の高い樹脂の設計に不可欠である。しかしながら、従来からある一般的な評価手法では、膜の最表面のみの構造を選択的に評価することは難しかった。
和周波発生(SFG)分光法は二次の非線形光学効果を利用した振動分光法であり、高い界面選択性を有するため、ポリマー薄膜表面の分子構造の評価に用いられている。
本検討では、空気及び溶媒界面における樹脂塗膜の官能基の配向状態の変化を、SFG分光法により評価することを目的とした。

2.実験(Experimental)
基板には、半円筒型の石英プリズムを用いた。樹脂塗膜はプリズム上にスピンコート法により設けた。膜厚は550 nm程度であった。
SFG測定は、表面・界面分子振動解析装置を用いて、可視光およびIR光を基板側から入射させ、塗膜の空気及び溶媒界面からのシグナルを得た。可視光およびIR光は基板表面に対してそれぞれおよそ50°および70°で入射させた。用いた偏光の組合せは、出射SF光、入射可視光、入射IR光の順にsspとした。測定温度は25℃であった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、ssp偏光の条件下で取得した、空気及び溶媒界面における樹脂塗膜のSFGスペクトルを示す。いずれの界面においても、2955 cm-1付近に大きなピークが観測された。また、2880 cm-1付近には、空気界面ではピークは見られなかったものの、溶媒界面ではピークがみられた。ssp偏光の条件では、基板に対して垂直方向の情報を検出する。従ってこの結果は、溶媒との接触により、比較的溶媒親和性の高い官能基が液相側に配向したことを示唆する。
以上のように、SFG測定によって、空気及び溶媒界面における樹脂塗膜の官能基の配向状態に関する情報が得られることが分かった。今後は、樹脂の構成成分によって、溶媒との接触による官能基の配向変化を抑制できるか、検討していく予定である。

図1.空気及び溶媒界面における樹脂塗膜のSFGスペクトル.

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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