利用報告書

外用剤有効成分の分析とその評価
田口浩之
花王株式会社

課題番号 :S-17-JI-0023
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :外用剤有効成分の分析とその評価
Program Title (English) :Analysis and evaluation of active ingredient for external skin preparations
利用者名(日本語) :田口浩之
Username (English) :H.Taguchi
所属名(日本語) :花王株式会社
Affiliation (English) :Kao Corporation

1.概要(Summary )
外用剤有効成分の皮膚への浸透や皮膚内での動態は製剤の処方設計に影響を受けることが知られている。今回、発毛有効成分であるミノキシジル(MXD)を含む製剤を調製して豚皮に塗布し、一定時間後のMXDの皮膚内分布を質量分析装置により解析した。
2.実験(Experimental)
MXD(Fig.1)を1%含有する2種の製剤(製剤A、及び製剤B)を調製し豚皮上にアプライした。2時間後、及び24時間後にそれぞれ皮膚を回収し、洗浄後、10m厚の凍結切片試料を作製した。試料にマトリックス(CHCA)を噴霧した後、MALDI-TOF MS(UltrafleXtreme JA-1, Bruker Daltonics)にて解析をおこなった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ポジティブイオンモードでMXDプロトン付加体[Minoxidil+H]+(m/z210)を検出した。空間分解能は30mとした。
Fig.2に試料のm/z210マスイメージ(光学画像とのマージ像)を示した。なお、製剤をアプライしていない無処理試料ではm/z210シグナルは全く検出されなかった。製剤をアプライして2時間後の試料については、製剤A、Bとも、アプライ側である角層(SC)中にのみMXDが検出された。製剤A、B間での分布の差は認められなかった。製剤をアプライして24時間後の試料については、同様に両製剤とも、角層(SC)中と真皮(Dermis)側にMXDが検出され、真皮側では特に毛穴(Pore)の下部領域に集中して分布していた。試料両端(角層と真皮側)以外の皮膚組織中にはMXDは検出できなかった。24時間後の試料では、製剤Aよりも製剤Bでより強いシグナルが観察された。
MXDの皮膚浸透性は著しく低いことが知られている。本研究で評価した製剤A、Bに関しても、アプライ2時間後ではほとんど皮膚に浸透しないことが確認されているため、製剤A、Bともに角層中にのみ検出されたことは妥当な結果であると考えられる。一方、アプライ24時間後では、経皮吸収評価において皮膚浸透及び透過が確認されているため、試料全面にMXDが検出されることを期待したが、今回の解析では試料両端にしか検出できなかった。これは、MXDのイオン化効率が不十分であったためと考えられる。製剤A、BはMXDの皮膚浸透性が異なるように設計された製剤であり、アプライ24時間後の製剤A、B間のシグナル強度の違いに反映されているものと予想されるが、さらにイオン化効率の最適化をおこない、解析していくことが必要である。
4.その他・特記事項(Others)
本解析は、大坂一生博士、宮里朗夫博士の技術支援を得て実施いたしました。厚くお礼申し上げます。また、測定に際しては、福井県立大学・生物資源学部の平修博士のアドバイスもいただきました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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