利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0003
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :多糖複合繊維表面のゼータ電位測定
Program Title (English) :Zeta-potential measurement for polysaccharide based hybrid fibers
利用者名(日本語) :デチョジャラッシ ダゥアカモル, 田村 裕
Username (English) :DECHOJARASSRI Duangkamol, Hiroshi Tamura
所属名(日本語) :関西大学化学生命工学部
Affiliation (English) :Faculty of Chemistry, Materials and Bio-engineering, Kansai University
1.概要(Summary)
セルロースナノファイバーは直径が3~50nmでアスペクト比(繊維長/繊維幅)が100以上の、極細の繊維状物質である。このCNFは、木材や竹などに由来する植物繊維を解きほぐす(解繊する)ことにより得られる。セルロースナノファイバーは、軽い(比重1.3~1.5g/cm3)、(2)強い(強度3GPa)、比表面積が大きく(250m2/g以上)、吸着特性が高い、硬い(引張弾性率140GPa程度)、熱による伸び縮みが小さい(線熱膨張係数0.1~0.2ppm/K)、(6)ガラス並みに熱を伝えやすい、生体適合性に優れている、など、数々の優れた特性を有しており、プラスティックの代替材料として注目されている。しかし、セルロースナノファイバーの最大の問題点は既存材料と比べ高価(3,000-10,000円/Kg)であることである。
そこで本研究では、湿式紡糸法を用いてキトサン繊維表面にセルロースナノファイバーをコーティングさせた複合繊維を紡糸し、その繊維表面のゼータ電位測定を行なって表面電荷と複合繊維物性との相関の検討を行うことを目的とした。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
- レーザーゼータ電位計(大塚電子製:ELSZ1000Z)
【実験方法】
湿式紡糸法を用いてキトサン単独繊維およびキトサン繊維表面にセルロースナノファイバーをコーティングさせた複合繊維を紡糸した。ゼータ電位の測定は、平板状試料の表面ゼータ電位測定用セルを備えたレーザーゼータ電位計(大塚電子製:ELSZ1000Z)を用いて行なった。なお、標準のモニター粒子としてはポリスチレンラテックス(粒子径約500nm)をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたものを、モニター液は塩化ナトリウム水溶液を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ゼータ電位測定において、繊維形態が大きく影響することがわかった。例えば、複合繊維をサンプル固定板にそのまま載せた場合には全く測定できなかった(Fig. 1左)が、戦意を編んで載せた場合には良好な測定結果を得ることができた(Fig. 1右)。
得られたゼータ電位値はそれぞれのキトサン単独繊維および複合繊維の構成成分に対応する妥当な結果であった。
4.その他・特記事項(Others)
支援機関の国立研究開発法人 物質・材料研究機構ナノテクノロジー融合ステーション 技術開発・共用部門 分子・物質合成プラットフォームの箕輪貴司氏および森田浩美氏からは、メールによる事前相談や繊維状物質の測定方法について事前に検討して頂くと共に、装置の使用トレーニングもして頂いたことに厚く感謝する。
参考文献
- 中村彰一,膜(MEMBRANE),30(6),344 (2005).
- 河野秀之,高分子論文集,55,334 (1998).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし