利用報告書

天然物ワニスの濃縮およびエポキシ化
西尾 潤
1)株式会社ユポ・コーポレーション

課題番号 :S-18-NM-0030
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :天然物ワニスの濃縮およびエポキシ化
Program Title (English) :Concentration and epoxidation of natural varnish
利用者名(日本語) :西尾 潤
Username (English) :J. Nishio
所属名(日本語) :1)株式会社ユポ・コーポレーション
Affiliation (English) :1) YUPO corporation

1.概要(Summary )
漆は水分の存在下6時間~1日かけて硬化する。
硬化時間短縮のため、UV硬化系に漆を配合する検討1)がなされているが、ウルシオールと直接結合しないので、ウルシオールが溶出してかぶれる等の懸念がある。
そこで漆生成物またはカシューオイル精製物(これらを総称して「天然物ワニス」という)に反応可能な官能基を導入することを検討した。たとえば、側鎖の二重結合をエポキシ化することによってエポキシ樹脂と同様の反応を示し硬化することが期待される。
また、漆の樹液は乳白色であるが、生成時に黒色になる傾向になるので、生漆からウルシオールを抽出することを検討した。

2.実験(Experimental)
生漆からウルシオールを抽出するのにはクロロホルムを用い、分液漏斗で水層を分離したのち、クロロホルム層をロータリーエバポレーターで濃縮した。
カシューオイル精製物は東北化工(株)から入手した。天然物ワニスの誘導体化は、天然物ワニス1molに対し0.1molの酢酸を添加し、過酸化水素1.2molを適用した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
漆の主成分であるウルシオールおよびカシューオイルの主成分であるカルダノールにはC15,C17の不飽和結合が含まれる2)。
生漆からクロロホルムを用いてウルシオールを抽出することは可能であった。
しかし、生漆の3倍量の溶剤を使用する必要があり、濃縮するにつれて黒色に変化するため、変色をできるだけ抑制するための新たな技術開発が必要である。
現状では従来のなやし・くろめによる精製3)が現実的であると考えられる。
カシューオイル精製物の過酸によるエポキシ化を試みたところ褐色から黄褐色の変色が見られた。生成物を1H-NMRで測定したところ、二重結合に水素に対応するシグナルはまったく変化がなく、エポキシ化は起きていなかった。変色の原因はフェノールの酸化によるキノン生成によるものと推定される。
精製漆(黒目漆)の過酸によるエポキシ化を試みたところ、反応開始から90分程度で激しく加熱発泡を起こし、不溶性の固体が得られた。ウルシオールのカテコール構造が酸化されやすく、ポリマーを生成したものと推察される。
以上から、エポキシ化にはフェノール性水酸基をブロックする必要があることが推察された。

4.その他・特記事項(Others)
1)特開2009-183903号公報
2)J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター 化学物質情報 ウルシオールhttps://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907062437595335
カルダノールhttps://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907069005197937
3)宮腰,高分子,56巻8月号,608-613,2007

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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