利用報告書

小惑星イトカワの微粒子表面に存在するクレーターの元素組成分析
松本徹
1) 宇宙科学研究所

課題番号 :S-16-MS-1066
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :小惑星イトカワの微粒子表面に存在するクレーターの元素組成分析
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :松本徹
Username (English) :Toru Matsumoto
所属名(日本語) :1) 宇宙科学研究所
Affiliation (English) :1) Institute of Space and Astronautical Science

1.概要(Summary )
探査機はやぶさは、小惑星イトカワを探査し、天体表面から数十ミクロンメートル程度のサイズの微粒子を回収して地球に持ち帰った。申請者らは、走査型電子顕微鏡を用いて、微粒子の表面模様の観察を行ってきた。微粒子の表面に、しばしばナノメートルサイズのクレーターが存在する。クレーターサイズは数十nmから500nmである。これらのクレーター内部には、しばしば溶融物が存在する。それらの元素組成を調べれば、クレーター形成の原因となった物質の組成が分かり、イトカワに衝突した物質の起源が制約できるかもしれない。そこで、本分析では、分子研の走査型電子顕微鏡(SU6600)に備えられたエネルギー分散型X線分析装置(Flat Quad以下FQ)を用いて、微粒子表面のクレーターの元素組成を調べることを目的とした。FQを用いた分析の結果、クレーター内部の溶融物に基盤の鉱物には含まれないAl,Caの信号を取得することができた。
2.実験(Experimental)
粒子の大きさは数十ミクロンメートルであり、分子研でハンドリングを行うと、試料をロスする可能性がある。そのため、あらかじめ、申請者が所属する宇宙科学研究所のSU6600で実際に使用している試料ホルダーに粒子を設置する。続いて、分子研の走査型電子顕微鏡(SU6600)を用いて、FQを中心に用いて元素組成情報を取得する。エネルギー条件は5kVとする。①粒子全体のEDSマッピングによる、粒子表面を構成する鉱物の同定。②クレーターのEDSマッピングによるクレーター内残渣物の探索を実施する
3.結果と考察(Results and Discussion)
内部SU6600を使って、微小クレーターを観察した。結果、17個中14個の微小クレーターは基盤のカンラン石と元素組成の区別は付かなかった、一方で、3個の微小クレーターをFQで分析した結果、基盤のカンラン石には含まれていないAlとCaのL線のピークを検出した。AlとCaは微小クレーターのリムと内部に分布していることがわかった。一方で、微小クレーターを調査した粒子表面に付着している12個の衝突溶融付着物をFQで分析した結果、11個の付着物には、Al,S, Ca, Fe,が含まれていた。Al,S, Ca, Feは隕石でもコンドライトと呼ばれる種類の主要構成元素であり、イトカワ物質も普通コンドライトと呼ばれる種に対応する。粒子に衝突した物質はコンドライト物質であると予想される。イトカワ物質であるか、外部から飛来した物質の残渣であるかどうかについての判定できていない。今後の透過型電子顕微鏡を使い、詳細分析を行う。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T,Matsumoto, S.Hasegawa, S,Nakao, M.Sakai, H.Yurimoto, Goldschmidt conference 2017, 平成29年8月13日-18日

6.関連特許(Patent)
なし

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