利用報告書

強相関電子系材料を利用した低損失電子デバイスの検討
勝野高志, 稲垣友美, 上杉勉
株式会社豊田中央研究所

課題番号 :S-14-OS-0040
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :強相関電子系材料を利用した低損失電子デバイスの検討
Program Title (English) :Study of low loss electric devices based on strongly correlation electron materials
利用者名(日本語) :勝野高志, 稲垣友美, 上杉勉
Username (English) :T. Katsuno, Y. Inagaki, T. Uesugi
所属名(日本語) :株式会社豊田中央研究所
Affiliation (English) :Toyota Central R&D Labs. Inc.

1.概要(Summary)
低消費電力の電子デバイスの実現は、低炭素社会に大きく寄与するため、社会の期待は大きい。現在、Siデバイスやワイドバンドギャップの特徴を生かしたSiCおよびGaNなどの電子デバイスの進展は目覚ましいが、その性能は理論値に近づきつつある。我々はその次の電子デバイス材料として強相関材料に注目しており、強相関原理を利用した低損失電子デバイスの創製を検討している。本課題では、品質の良い強相関電子材料を得るため、パルスレーザ堆積法(PLD)による酸化バナジウム(VO2)に着目し、その構造について解析した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
人工超格子薄膜形成システム(PLD)
【実験方法】
VO2薄膜はPLD法によって成膜した。基板はTiO2(001)、ターゲットはV2O5を用いた。基板-ターゲット間の距離は40 mmとし、酸素雰囲気下で行った。パルスレーザの周波数は5 Hzとし、レーザエネルギーは100 mJとした。成膜時の基板温度は430℃、成膜時間は6時間とした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にVO2薄膜のXRD測定の結果を示す。63°および66°付近にピークを観測し、それらはそれぞれTiO2(002)およびVO2(002)によるものである。この結果よりVO2薄膜は結晶化しており、c軸方向VO2(001)に成長していると考えられる。
図2にVO2薄膜の断面TEM像を示す。VO2薄膜の厚さは、20 nm程度であることがわかる。この結果より、VO2薄膜はTiO2基板の結晶方位を引き継ぎエピタキシャル成長しており、この観察範囲では界面での結晶欠陥は認められず高品質な薄膜であることがわかった。今後は、この高品質なVO2薄膜で電子デバイスを創出し、オン抵抗やスイッチング特性について評価を行う予定である。

Fig.1 XRD measurement of VO2 film

Fig.2 Cross-sectional TEM image of VO2 film

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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