利用報告書
課題番号 :S-18-JI-0008
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :微量有機化合物の金属表面への吸着動態調査
Program Title (English) :Kinetics of adsorption of trace organic compounds on metal surfaces
利用者名(日本語) :山本裕子
Username (English) :Yuko S. Yamamoto
所属名(日本語) :北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
Affiliation (English) :Japan Advanced Institute Sciense and Technology,
Graduate School of Advanced Science and Technology
1.概要(Summary )
金表面に吸着したルイサイト類似化合物について、表面における動態を観察するためにXPS測定を依頼した。XPS測定結果から、金が化合物と直接相互作用している可能性が示唆されたものの、金の4f軌道のピークエネルギーシフトが加水分解物のピークエネルギーシフトとの明確な相関は得られなかったため、その相互作用の起源が物理吸着的なものか化学吸着的なものかまでは判断できなかった。金表面に吸着した同化合物のDFT計算結果が収束しにくいことと関係がある可能性がある。
2.実験(Experimental)
金蒸着基板上にルイサイト類似化合物水溶液を滴下、乾燥させた後にXPSを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
金表面に吸着したルイサイト類似化合物について、表面における動態を観察するためにXPS測定を依頼した。ルイサイト類似化合物の3d軌道のピークエネルギーが、金表面に吸着することで110~440 meV程度高エネルギーシフトした。このピークシフトは、金表面に吸着している同化合物のピークと吸着していない同化合物のピークの相対強度比の変化で説明できるように見られた。また金の4f軌道のピークエネルギーシフトが同化合物のピークエネルギーシフトと相関があることを期待したが、同化合物の付着により金の4f軌道のピークは低エネルギーシフトを示したり高エネルギーシフトを示したりしており、明確な相関は得られなかった。ルイサイト類似化合物に含まれる炭素原子や酸素原子については不純物が多い為に解析は見送った。同化合物に含まれる塩素原子も、金表面に吸着することにより最大200 meV程度高エネルギーシフトするように見られる。これらの結果から、金表面とルイサイト類似化合物は何らかの相互作用をしているようだと言えそうだが、その相互作用の起源が物理吸着的か化学吸着的かまでは判断できなかった。金の4f軌道のピークエネルギーシフトに明確な傾向が見られなかったことについて、金表面に吸着した同化合物のDFT計算結果が収束しにくいことと関係がある可能性がある。つまり、同化合物と金クラスターとの錯体があまり安定していない、あるいは様々な安定構造を持っている可能性が示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
現在、本成果を元に国際投稿論文執筆中。本事業利用には科研費等補助金国際共同研究強化・基金(山本裕子) 15KK0188の支援を受けた。技術支援者名: 木村一郎技術専門職員。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし