利用報告書

抗菌性リン酸カルシウムナノ粒子による遺伝子導入技術を応用した組織再生
天雲太一
東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野 

課題番号 :S-20-KU-0017
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :抗菌性リン酸カルシウムナノ粒子による遺伝子導入技術を応用した組織再生
Program Title (English) :Regeneration treatment via gene transfection using anti-bacterial calcium phosphate nanoparticles
利用者名(日本語) :天雲太一
Username (English) :Taichi Tenkumo
所属名(日本語) :東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野 
Affiliation (English) :Tohoku University Graduate School of Dentistry Division of Advanced Prosthetic Dentistry

1.概要(Summary )
本実験の目的は、歯周病原因菌を用いた抗菌試験や、MC3T3E1細胞を用いた遺伝子導入試験、細胞毒性試験などを行い、リン酸カルシムナノ粒子をベースとした抗菌性遺伝子導入剤を開発することである。本ナノテクノロジープラットフォームでは、開発した抗菌性遺伝子導入剤ナノ粒子のゼータ電位、分散率および粒子サイズを測定し、表面性質を分析を行った。
2.実験(Experimental)
pH9.0に調整した硝酸カルシウム(18 ⅿM)とリン酸水素二アンモニウム(10.8 ⅿM)を等量混和した溶液にplasmid DNA (pUC57-EGFP:1 mg/mL)を加え、再度硝酸カルシウムとリン酸水素二アンモニウムを等量加えた後、最後にプロタミン硫酸塩(5、10、もしくは 20 mg/mL)を加えて十分に攪拌した。コントロール群としてプロタミン硫酸塩の代わりにplasmidDNA(pUC57-EGFP:1mg/ml)を加えて攪拌した。作製したサンプルのゼータ電位と粒径を大塚電子製ELSZ-2型を用いて計測した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
結果を下の表に示す。
Sample Average size / nm PDI Ζpotential / mV
CaP / protamine-0 613 0.3 -26±3
CaP / protamine-5 625 0.4 17±3
CaP / protamine-10 628 0.3 20±3
CaP / protamine-20 664 0.4 20±3
作製した遺伝子導入剤の粒子径はプロタミンの有無による有意差は認められなかった。しかし、ζ電位については付与するプロタミンの濃度(0-20 mg/mL)では、有意な差は認められなかったが、プロタミンの有無によって大きく異なっていた。プラスミドDNAはマイナスの電荷をもつのに対し、プロタミンはプラスに電荷をもっている。このことから最後に添加する試薬の電化によって、作成するリン酸カルシウムナノ粒子の電化が影響を受けることを示していた。しかし、異なるプロタミン濃度間で、リン酸カルシウムナノ粒子のζ電化に有意差が認められなかったことは、リン酸カルシウムに付着するプロタミン量に上限があるのか、本実験で設定した5-20mg/mLの濃度はリン酸カルシウムナノ粒子の電化に影響を及ぼすには小さすぎることによるのか、本実験では明らかにならなかった。一方、プロタミンの有無は作成したリン酸カルシウムナノ粒子の粒子径に影響を及ぼさなかった。これは混和の最後にplasmidDNAもしくはプロタミン硫酸塩がリン酸カルシウムを覆うことによって結晶の成長を抑制するという従来の報告と一致していた。
4.その他・特記事項(Others)
大塚電子製ELSZ-2型を用いた計測について、計測代行を行っていただきました九州大学大学院工学研究院 応用化学部門 利光先生、荒谷先生に感謝申し上げます。 
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Xiang C, Tenkumo T, Ogawa T, Kanda Y, Nakamura K, Shirato M, Sokolova V, Epple M, Kamano Y, Egusa H, Sasaki K, Acta Biomater, 119. (2021)p.p.375-389.
6.関連特許(Patent)
なし

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