利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0041
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :新しいp型Sn(II)系酸化物半導体の探索
Program Title (English) :Exploring new p-type Sn(II)-based oxide semiconductors
利用者名(日本語) :簔原誠人,菊地直人,相浦義弘
Username (English) :M. Minohara, N. Kikuchi, and Y. Aiura
所属名(日本語) :国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光基礎技術研究部門
Affiliation (English) :Research Institute for Advanced Electronics and Photonics,
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
1.概要(Summary )
革新的酸化物デバイスの開発に向け、実用化されているn型酸化物半導体に匹敵する電気特性を持つp型酸化物半導体の開発が強く求められている。これまで我々はα-SnWO4において、ポストアニールによるp型伝導性発現、および残存酸素によって酸化されたSn (Sn2+→Sn4+) によるWO6八面体中への置換欠陥がp型伝導性の起源であることを見出した。実用化に向けて、キャリア濃度の精密の向上が不可欠である。そこで本研究では、ポストアニール時の添加酸素濃度の精密制御を行うことでα-SnWO4のキャリア濃度の著しい向上を達成した。
2.実験(Experimental)
所定量のSnOとWO3を混合し、N2雰囲気中873 Kで焼成し、錠剤成型後O2-N2雰囲気中923 Kでアニールして多結晶試料を作製した。その際、添加酸素濃度を0 ppmから30 ppmまで変化させた。生成した結晶相の同定はX線回折により行った。電気物性は錠剤形状の試料にてホール測定により行った。またSn4+量は透過法による119Snメスバウアー分光により見積もった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
XRDの結果より、合成した試料は全て単相SnWO4であった。ホール測定から評価したキャリア濃度は添加酸素濃度の増加に伴い単調増加し、最大で二桁近く増加した。119Snメスバウアー分光測定から見積もったSn4+量は、電気特性の違いによらずほとんど変化していないことがわかった。正味のキャリア濃度がSn4+に由来する置換欠陥と酸素欠損のバランスで決まることから、ポストアニールの条件を変えることで、SnWO4中に存在する酸素欠損を減らすことができたものと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費 JPK04946, JP18K05285の助成を受けたものです。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)土橋 優香、菊地 直人、簔原 誠人、三溝 朱音、西尾 圭史,第68回応用物理学会春季学術講演会,2021/03/19
(2)三溝 朱音、菊地 直人、簔原 誠人 、阪東 恭子、相浦 義弘、壬生 攻、西尾 圭史,第68回応用物理学会春季学 術講演会,2021/03/19
(3)土橋 優香、菊地 直人、三溝 朱音、簔原 誠 人、佃 康平、組頭 広志、西尾 圭史,SATテクノロジー・ショーケース 2021,2021/02/19
(4) 佃 康平、菊地 直人、簔原 誠人、三溝 朱音、土橋 優香 、西尾 圭史,SATテクノロジー・ショーケース 20, 2021/02/19
(5)佃 康平、菊地 直人、簔原 誠人、三溝 朱音、土橋 優香、西尾 圭史,第34回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム, 2021/01/10
(5) 佃 康平、三溝 朱音、土橋 優香、 西尾 圭史、菊地 直人、簔原 誠人、第36回 日本セラミックス協会関東支部研究発表会 2020/9/17 (奨励賞受賞)
(6) 土橋 優香、三溝 朱音、佃 康平、西尾 圭史、菊地 直人、簔原 誠人、組頭 広志、第36回 日本セラミックス協会関東支部研究発表会 2020/9/17
6.関連特許(Patent)
なし