利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1069
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規な磁性伝導体の結晶構造解析
Program Title (English) :Crystal structure analyses of new magnetic molecular conductors
利用者名(日本語) :藤原秀紀
Username (English) :H. Fujiwara
所属名(日本語) :大阪府立大学大学院理学系研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Osaka Prefecture University
1.概要(Summary )
我々は磁場や光照射などの外部刺激に対し顕著な応答性を示す、磁性と伝導性・光物性の複合機能性の観点から興味が持たれる、新規な磁性伝導体の開発を行っている。そのような新規物質の開拓には、分子間相互作用を解析するための結晶構造解析が重要である。今回、ビスメチルチオ置換TTF誘導体に直接1,3,4-チアジアゾールを結合させた分子1を用い、CuX3– (M = Cl, Br) とのカチオンラジカル塩(1)(CuX3–) を作製し、その構造解析を行った。
2.実験(Experimental)
X線集光ミラーを備えた極微小結晶用単結晶X線回折装置(Rigaku社製 4176F07 CCD-3)を用いた回折測定を250K付近の温度領域で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
我々は磁性アニオンとの相互作用部位として磁性遷移金属原子への配位能を有する各種含窒素複素環を置換したTTF分子を用いた磁性伝導体の開発を行っている。今回、ビスメチルチオ置換TTF誘導体に直接1,3,4-チアジアゾールを結合させた分子1を用い、CuX3– (M = Cl, Br) とのカチオンラジカル塩(1)(CuX3–) を作製し、その構造解析を行った。結晶作製は複合分子1とCuCl2およびCuBr2を用いた化学酸化によって行い、得られた1・CuCl3、1・CuBr3の黒色針状結晶を用いて、X線構造解析を行った。これらの錯体は互いに同型で1:1組成である。TTFの結合長から価数を求めると+1.0であり、TTF部位がカチオンラジカルになっていることがわかった。また、図1(上)に示すように、チアジアゾールの外側の窒素原子が銅へと配位していた。ドナー分子は図1(下)に示すように、b軸に沿って二量化しながら積層している。TTF部位間の重なり積分値を計算すると、b1 = 40.2, b2 = –2.81 (×10-3)となり、カチオンラジカルのTTFが強く二量化していることが判った。一方、-d間の重なり積分値を計算すると–5.69 ×10-3という比較的大きな値であった。
図 1・CuCl3塩の分子構造(上)と積層構造(下)
4.その他・特記事項(Others)
本研究は科学研究費補助金(基盤研究(C)15K05483)により行われた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Horikiri and H. Fujiwara,
Magnetochemistry, Vol. 3 (2017) p. 8 (10 pages).
(2) R. Okuno, M. Yamaguchi and H. Fujiwara, Dalton Trans. Vol. 46 (2017) p.p. 4912-4916.
(3) 齋藤愛実, 奥野凌太, 藤原秀紀, 日本化学会第97春季年会, 平成29年3月16日.
(4) 山口美奈代, 奥野凌太, 藤原秀紀, 日本化学会第97春季年会,平成29年3月16日.
6.関連特許(Patent)
なし