利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1021
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規ナノ磁性体およびマルチフェロイックスの磁気物性
Program Title (English) :New nano-magnetic materials and magnetic properties of multiferroic materials.
利用者名(日本語) :根津伸治1), 井上克也2)
Username (English) :S. Nezu1), K. Inoue2)
所属名(日本語) :1) 広島大学先進機能物質科学研究センター, 2) 広島大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Institute for Advanced Materials Research, Hiroshima University
2) Department of Chemistry, Graduate school, Hiroshima University
1.概要(Summary )
ある種の有機化合物にカリウムをドープした物質の物性研究を行う中で、試料中の微量不純物の影響は極めて重要であることをこれまでに見出している。もっとも簡単な例としては鉄イオンが数~数千ppmレベルで不純物として存在する場合、カリウムとともに150℃程度で加熱することにより、鉄イオンは完全に金属鉄微粒子に変化して強磁性を発現する。さらには、鉄以外にある種の不純物元素が共存する場合、超伝導転移の可能性が高い磁化の飛びが再現性よく現れることも見出している。これら初期の研究においては、市販の鉄ヤスリから削りだした鉄粉でこの現象を観察していた。しかしながら、不純物の組成が安定しないため、実験の再現性に難点があった。そこで、本研究では不純物組成をコントロールしやすい試薬グレード鉄粉9種類とカリウムを混合して、異常磁気と不純物の相関を詳細に研究した。さらに、その知見に基づき、異常磁気の起源となる化合物を合成し、その磁性を調べた。
2.実験(Experimental)
試薬として入手することのできる鉄粉6種類および鉄系化合物2種類のそれぞれと金属カリウム(モル比数倍過剰量)を適当な容器に封入して150~1000℃で反応させてサンプルとした。これらの磁化をSQUID磁束計(MPMS-7あるいはMPMS-XL7)で測定した。低磁場印加の実験の場合は、SQUID装置付属の超低磁場オプションを用いて、残留磁化の影響をできる限り除去した。鉄粉中の不純物はグロー放電質量分析法を用いて全元素半定量分析した。上記から推定した異常磁気の起源となる化合物を別途合成して、これに金属カ
リウムを混合して加熱してサンプルとし、この磁性を
上記と同様に測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今回の実験に用いた鉄粉および鉄系化合物 計8点のうちの一つにおいて,金属カリウムと混合加熱することにより下図に示すような磁気転移を再現性よく観測した。
鉄の強磁性が共存して超伝導体積分率も小さいため、磁化の値は負にまで減少しないが、体積分率は約0.1%であった。次にグロー放電質量分析結果から、このサンプルを特徴づける不純物元素を絞り込み、金属カリウムとの反応により生成する化合物を推定した。別途この化合物を合成し、カリウム混合サンプルの磁化を測定して、上図の磁気転移と一致することを確認した。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







