課題番号 ：S-15-NM-0050
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：新規有機伝導性材料の創製
Program Title (English) ：Synthesis of novel organic conducting materials
利用者名（日本語） ：寺内毅1), 小林由佳2)
Username (English) ：T. Terauchi1), Y. Kobayashi2)
所属名（日本語） ：1) 東北大学大学院理学系研究科, 2) NIMS
Affiliation (English) ：1) Department of Chemistry、Tohoku University, 2) NIMS

１．概要（Summary ）
伝導性有機物はエレクトロニクス分野で極めて重要な材料となっている。本研究では、絶縁体から金属に至るまでの新規有機伝導性分子について、ドーパントを加えることのない新分子設計指針に基づき合成し、輸送現象を始めとする多角的な電子物性を精密に評価することにより、実用に資する革新的な有機電子材料の開発を目的とする。テトラチアフルバレンに水素結合能を有する置換基を導入することにより、化学的に安定なカチオンラジカルを固体、液体中に発生可能なことを見出しており、これを基軸として高伝導性フィルムや電子伝導性イオン性液体の開発などに取り組んでいる。

２．実験（Experimental）
新規に分子設計されたテトラチアフルバレン系誘導体を合成し、その分子構造や性質について同定を行った。同定については、NIMS分子•物質合成プラットフォーム設置のNMRやIRを用いた。また、得られた分子の固体や薄膜の同定には、SEMイメージ写真やAFM画像を撮影することにより行った。

３．結果と考察（Results and Discussion）
これまでにテトラチアフルバレンカルボン酸を第一級アミンと塩を形成することにより半導体特性を獲得する一般原理を見出し、研究開発を進めてきたが、本研究ではアンモニウム塩へと誘導せず、カルボン酸単独で伝導性を発現する分子を複数設計し、合成を行った。1H- 13C-NMRおよびIRによる分子構造の同定の結果、設計したとおりの分子が得られていることを確認し、また、これからのうちの複数のテトラチアフルバレン系誘導体が単分子で伝導性キャリアを発生し、金属または半導体的特性を有することが明らかとなった。（論文投稿、査読中）また、これらのうち、最も伝導性が高い分子については、水溶媒からの薄膜作成が可能であり、SEMやAMF画像から数100　nm程度の膜厚で極めて良質薄膜を形成していることが分かった。これは、柔軟性を有するフレキシブル有機透明電極へと応用できる大きなポテンシャルを有する材料であることが明らかとなった。（特許取得）

４．その他・特記事項（Others）
なし
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
• 2015/12/16-21 : Y. Kobayashi : “Molecular Design and Electronic Properties of TTF- and TTP-based Salt-Bridge Conductors” Pacifichem2015
• 2015/11/05-06 : 小林由佳 : “プロトン欠陥ドーピング：テトラチアフルバレン誘導体の新電子機能” 無機高分子討論会
• 2015/02/20-22 : 小林由佳 : “純有機分子性金属の合成と電子物性” 東北大学　第二回リーディング大学院研究会
• 2015/02/09-12 : Y. Kobayashi : “New organic doping system: TTF-based salt-bridge conductors” AMN-7 Conference
2015/02/01-03 : Y. Kobayashi : “New organic doping system: TTF-based salt-bridge conductors” NTU-NIMS Synposium
６．関連特許（Patent）
Organic Transparent Electrode, Method for Producing Organic Transparent Electrode, Touch Panel, Display, Organic Metal, Method for Producing Organic Metal, Compound or Salt Thereof, Electric Wire and Electronic Device
Y, Kobayashi, T. Terauchi, S. Sumi
US 9,202,605 B2, Dec. 1. 2015 (US特許取得)