利用報告書

新規燃料電池電極触媒の開発
ハフズ イナス ハザー ハメド
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

課題番号 :S-15-KU-0014
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規燃料電池電極触媒の開発
Program Title (English) :Development of Fuel Cell for High Temperature Operation
利用者名(日本語) :ハフズ イナス ハザー ハメド
Username (English) :Hafez Inas Hazzaa Hamed
所属名(日本語) : 九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Affiliation (English) :International Institute for Carbon-Neutral Energy Research
Kyushu University

1.概要(Summary )
エネルギー問題に対する解決策の一つとして固体高分子形燃料電池(PEFC)が注目されている。普及には低コスト化が必須で、そのためには触媒白金量の大幅な低減が避けられない。これまでに異種金属とのコアシェル化、アロイ化などで白金量を低減し、白金比表面積を増やす工夫がなされてきた。しかし、PEFC中の強い酸性条件下に置いては白金以外の金属は溶解するため、長期間の安定性(つまり電池耐久性)に問題が生じると予想される。そこで、パラジウムナノ粒子をコアとし、白金をシェルとするコアシェル化により質量活性を高めることで低白金化を実現することを目指した。

2.実験(Experimental)
当研究室で開発してきたカーボンナノチューブ(CNT)へ白金を担持する技術を用いて白金担持を行った。まずCNTに担持足場となるpolybenzimidazole(PBI)を被覆し(PBI被覆CNT)、パラジウム塩を添加したエチレングリコール(EG)水溶液中室温で撹拌し、30分後に白金塩を添加し室温において撹拌を行うことで、PBI被覆CNT上にパラジウムcore、白金shellナノ粒子(MWNT/PyPBI/Pd-Pt)を成長させた(図1)。コアシェルナノ粒子の詳細な構造を確かめるために電子顕微鏡観察を走査型電子顕微鏡(20-1 超高分解能走査電子顕微鏡)で行い、配位状態の観察をIR測定(07-2 中赤外・遠赤外吸収測定装置)で行った。電極触媒を用いた燃料電池試験は燃料電池評価装置(30-1 ナノ炭素燃料電池評価システム)で実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)

図1.Pd-Ptコアシェル触媒作製スキーム

 電子顕微鏡観察の結果、コアシェル形ではなく、パラジウムナノ粒子にPtナノ粒子がアイランド状に成長し、金平糖状になっている様子が観察された。白金間結合が強いことからパラジウムナノ粒子表面での白金核生成が優勢であったためと考えている。別途実施したX線光電子分光測定(XPS測定)からはPtおよびPdに由来するピークが観察されたことから、両者が複合化していることは間違いないことを確認している。仕込みはPd:Pt=10:1であったが、XPSによる元素分析においてはPt:Pt=3:1と比が大きくずれていることから、来年度においては原子吸光測定によって正確に定量することを計画している。

4.その他・特記事項(Others)
特になし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. R. Berber, I. H. Hafez, T. Fujigaya*, N. Nakashima “A highly durable fuel cell electrocatalyst based on double-polymer-coated carbon nanotubes” Sci. Rep. 5, art. no. 16711 (2015).
(2) Z. Yang, I. H. Hafez, M. R. Berber, N. Nakashima “Enhancements in durability and catalytic activity of anode electrocatalyst based on polymer-coated carbon black for direct methanol fuel cell“ ChemCatChem, 7, 808-813 (2015).
6.関連特許(Patent)
特になし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.