利用報告書

新規酸化物触媒の開発
江口 弘人1), 山内 美穂1),2)
1) 九州大学理学府, 2) 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

課題番号 :S-16-KU-0050
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :新規酸化物触媒の開発
Program Title (English) :Development of novel metal-oxide catalysts
利用者名(日本語) :江口 弘人1), 山内 美穂1),2)
Username (English) :H. Hiroto1), M. Yamauchi1),2)
所属名(日本語) :1) 九州大学理学府, 2) 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Affiliation (English) :1)School of Science, Kyushu University, 2) International Institute for Carbon-Neutral Energy Research, Kyushu University

1.概要(Summary )
カルボン酸は天然に豊富に存在する天然資源であり、バイオ由来の有機酸を水素化して作製するアルコールは環境負荷の少ない化学品して注目されている。しかし、カルボン酸はカルボニル炭素の求電子性および分極率の低さにより、反応性が乏しく高い安定性をもつため、カルボン酸を水素化して還元するには、還元剤として高温・高圧の水素ガスあるいは金属水素化物などを用いる必要がある。他方、電極触媒としてアナターゼ型酸化チタン微粒子を用いることで、ジカルボン酸であるシュウ酸の電気化学的還元反応により、一価アルコールであるグリコール酸が生成することが明らかとなった1)。また、この反応は、水を水素源として温和な条件で進行する上、副生成物の生成もほとんどないため環境にやさしいという特徴を持つ。しかしながら、活性点や反応経路などアナターゼ型TiO2微粒子上での反応機構は全く明らかになっていない。そこで本研究では、活性の起源を明らかにするため、形状を制御したTiO2微粒子を調製し、これらのTiO2微粒子の触媒構造と触媒特性の関連性について検討した。
2.実験(Experimental)
既報を参考に、(101)面の露出した柱状切頭十面体(101-column)、(101)面の露出した切頭十面体(101-icosa)、(001)面の露出した切頭十面体(001-icosa)、(001)面の露出したシートが凝集した球体(001-sheet-C)、(001)面の露出したシートが集積した球体(001-sheet-S)、(201)面の露出した非対称切頭十面体(201-icosa)のアナターゼ型TiO2微粒子を、反応条件の異なる種々のソルボサーマル法を用いて作製した。得られたTiO2微粒子の粉末X線回折パターンをSmartLab (Rigaku)、電子顕微鏡像をJEM-2010HCKM(JEOL)およびSU9000(HITACHI)を使って測定した。次に形状を制御したTiO2微粒子を塗布した電極とポテンショスタット(VersaSTAT4 , AMETEK)を用いて、クロノアンペロメトリーを行い、TiO2微粒子のシュウ酸に対する電気化学的還元特性を調べた。反応は3電極系2室電気化学セルを使用し、カソードセルは硫酸ナトリウム0.2 M、シュウ酸0.03 Mの溶液40 mL、アノードセルは硫酸ナトリウム0.2 Mの溶液40 mLを用い、-0.7 V vs RHE、50℃、2時間の条件で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
電子顕微鏡および支援を受けて測定した超高分解能走査型電子顕微鏡より作製したTiO2微粒子は報告されたTiO2微粒子と同様の形状をしていることがわかった。また、報告と同様の粉末X線回折パターンが観測されたことから、形状が制御され、異方性をもつアナターゼ型TiO2微粒子が得られたことが確認された。TiO2微粒子上での電気化学的シュウ酸還元反応生成物とその収率を図1に示す。触媒特性は比表面積とある程度の相関は見られたが、それ以外の因子も影響していることがわかった。そこで電子顕微鏡像を基にTiO2微粒子の形状と比較すると、TiO2微粒子の頂点や稜線の濃度に依存している可能性が示唆された。これは形状依存して変化するTiO2の電子状態と関連があると思われる。
4.その他・特記事項(Others)
1) Watanabe, R. et al., Energy Environ. Sci., 2015, 8, 1456-1462.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 江口弘人, 貞清正彰, 加藤健一, Juhasz Gergely ,山内美穂, 日本化学会第97春季年会, 平成29年3月19日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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