利用報告書

新規酸化鉄相のメスバウアー分光測定
井出裕介
物質・材料研究機構

課題番号 :S-16-NI-35
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :新規酸化鉄相のメスバウアー分光測定
Program Title (English) :Mössbauer spectroscopic study on the new phase of iron oxide
利用者名(日本語) :井出裕介
Username (English) :Yusuke Ide
所属名(日本語) :物質・材料研究機構
Affiliation (English) :National Institute for Materials Science

1.概要(Summary )
多孔質シリカ中で合成した新規酸化鉄相中のFeの化学状態に関する情報を得るため,57Feメスバウアー分光測定を室温にて実施した.

2.実験(Experimental)
酸化鉄微粒子を含有した多孔質シリカ粉末試料120 ~ 310 mgを内径18 mmの試料ホルダーに詰め,通常の透過法を用いて室温にて57Feメスバウアースペクトルを測定した.同試料(Fe/SiO2と略)は、多孔質シリカとFe源をソルボサーマル処理した後,HCl処理することで合成したが,今回は,比較のために、Fe/SiO2をエタノールで処理したもの,Fe/SiO2の合成直後(HCl処理を施さなかったもの)のもの,HClの代わりにNaOHで処理したものの合計4つの試料に対してスペクトルの測定を実施し,Feの化学状態を比較した.

3.結果と考察(Results and Discussion)
スペクトルはすべて,反強磁性 -Fe2O3 の典型的な磁気分裂パターンとは異なる非磁性の四極子分裂パターンとなり,当初存在が予想されていた -Fe2O3 は,存在しないか,存在したとしても室温付近で超常磁性になっている可能性が大きいことがわかった.
Fe/SiO2のスペクトルは,2本×1組のローレンツ曲線では完全にはフィッティングできず,構造解析の結果(新規水酸化鉄相と判明)を支持した.エタノール処理によるスペクトルの変化はみられず,この処理によるFeの局所環境の変化はほとんどないことが示された.
合成直後の試料の2本の吸収ピークの線幅は比較的広く,NaOH処理試料でも同様のスペクトルが得られた.これらの結果は,HCl処理によって多孔質シリカ外で析出した酸化鉄が除去されたこと,さらには,HCl処理に伴い非晶質相から新規水酸化鉄相へ結晶化したことを示唆する他の分析結果を裏付けた(図1のように,合成直後の試料に対して,2本×2組のローレンツ曲線フィットおよび2本×6組のローレンツ曲線フィットを実施したところ,2組あるいは6組の四極子分裂ダブレットが一体化し,複数の酸化鉄相の存在が示唆された).

図1 多孔質シリカ中に担持された新規酸化鉄相の
メスバウアースペクトルおよび解析結果の一例

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし(投稿準備中)

6.関連特許(Patent)
なし(申請準備中)

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