利用報告書
課題番号 :S-15-KU-0013
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規高温型燃料電池の開発
Program Title (English) :Development of Fuel Cell for High Temperature Operation
利用者名(日本語) :バーバー モハメド レダ アリ アボダラ
Username (English) :Berber Mohamed Reda Ali Abdalla
所属名(日本語) : 九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Affiliation (English) :International Institute for Carbon-Neutral Energy Research
Kyushu University
1.概要(Summary )
次世代燃料電池電極触媒には高耐久な高温無加湿動作が求められている。本目的に対して劣化挙動を解析すべく、開発している新たな触媒の燃料電池長時間動作前後のナノ構造を解析する。本研究においては劣化の指標としてカーボン担体の劣化をモニターする。カーボンの劣化は担持されている白金の凝集・脱離を引き起こすために、極めて重要なパラメーターである。カーボンの劣化は長時間動作前後の電子顕微鏡観察とX線粉末回折測定を用いて行った。
2.実験(Experimental)
CNT (60 mg) とPBI (12 mg) をジメチルアセトアミド中で反応させ、3時間超音波処理後、濾過洗浄し、乾燥後黒色の固体を得た(PBI被覆CNT)。このうち20 mgに30%PVPA水溶液4 mlと水4 mlを加え水中で2時間攪拌後、濾過洗浄し、黒色の固体を得た(PVPA複合体)。このうち10 mgを60%エチレングリコール中でヘキサクロロ白金酸6水和物 (8wt%水溶液) (40 ml) と140 ˚Cで30分及び80 ˚Cで20時間反応させることにより黒色の固体を得た。作製した触媒とリン酸含浸PBI膜を用いて単セルを作製し評価を行った。セル評価は燃料電池評価装置(30-1 ナノ炭素燃料電池評価システム)により燃料電池協議会の定める耐久性試験法を120℃無加湿条件で実施した。測定後の電極触媒の劣化状態を電子顕微鏡観察(20-1 超高分解能走査電子顕微鏡)およびX線回折測定(26-1 全自動水平型多目的X線回折装置)により実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
12,000サイクル後の単セルを分解しカソード側の電極触媒についてラマン測定を行った。その結果、PBI被覆を行った電極触媒においては白金ナノ粒子の凝集はほとんど見られないことが確認された。また、CNTの形状にもほとんど変化がなく、比較として作製した従来通りの酸化CNTを用いた単セルにおいてCNTが細くなっておりまた白金ナノ粒子の粗大化が生じた結果とは大きく異なった。一方、粉末X線回折測定においても炭素100ピークにほとんど変化はなく、CNTの結晶性が失われていないことが明らかとなった。この結果は、酸化処理したCNTを用いて作製したセルにおいては、耐久性試験後に炭素100ピークのブロード化が見られた事実とは異なる。
このことから、PBIを用いてダメージのないCNTを用いる技術が高い耐久性をもたらしていることが明らかとなった。本研究により、炭素自体の耐久性を高めることが極めて重要である事実がさらに確かとなった。今後の燃料電池高耐久化研究において重要な成果であり、今後の実用化に向けた研究のマイルストーンとなる結果といえる。
4.その他・特記事項(Others)
特に該当なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Z. Yang, M. R. Berber, N. Nakashima “Design of polymer-coated multi-walled carbon nanotube/carbon black-based fuel cell catalysts with high durability and performance under non-humidified condition” Electrochimica Acta, 170, 1-8 (2015).
(2) M. R. Berber, I. H. Hafez, T. Fujigaya*, N. Nakashima “A highly durable fuel cell electrocatalyst based on double-polymer-coated carbon nanotubes” Sci. Rep. 5, art. no. 16711 (2015).
6.関連特許(Patent)
該当なし







