利用報告書

有機ナノ材料の電子状態の研究
堀家匠平1)
1)産業技術総合研究所ナノ材料研究部門

課題番号 :S-19-NR-0032
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機ナノ材料の電子状態の研究
Program Title (English) :Electronic property of organic material
利用者名(日本語) :堀家匠平1)
Username (English) :S. Horike1)
所属名(日本語) :1)産業技術総合研究所ナノ材料研究部門
Affiliation (English) :1)Nanomaterials Research Institute, National Institute of Advanced
Industrial Science and Technology (AIST)

1.概要(Summary )
 導電性有機材料は、現在広まりつつあるIoT社会において、環境情報のセンシングやワイヤレス給電のためのデバイス素材として注目を集めている。有機太陽電池や有機トランジスタ、有機熱電素子に代表される有機デバイスの高性能化には、有機材料の、特に膜形態での表・界面状態や電子状態を把握することが必要不可欠である。一方、シリコンを始めとする機能性材料の特性(導電性など)を飛躍的に向上させる技術として、不純物を微量添加するドーピング操作が古くから適用されているが、近年、有機材料においてもその重要性が広く認識されている。
本研究では、優れた有機ナノ材料であるカーボンナノチューブ(CNT)に注目し、ドーピングによるキャリア輸送特性の制御を目指している。とりわけ上記p-n接合デバイスにおいては、正孔、電子をそれぞれ多数キャリアとするp型、n型双方の材料が必要になることから、CNTの輸送特性をp型からn型まで連続的かつ広く制御するとともに、その安定性を向上することを目指した材料開発を行っている。ドーピングによってキャリアの種類や濃度が変化すると、仕事関数もそれに応じた変化を示すと予測される。そこで、ドーピングによる仕事関数の変化をデバイス動作環境下(= 大気中)にて測定可能な大気中光電子分光を行った。

2.実験(Experimental)
CNTの膜をジメチルホルムアミド(DMF)に浸漬、乾燥後、光電変換分子材料評価装置:光電圧特性評価ユニット(理研計器社製 大気中光電子分光AC-3)を用いてCNTの仕事関数変化を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 光電子分光の結果をFig. 1に示す。DMFに浸漬した後のCNTの仕事関数は約4.6 eVと、未処理のCNTに比べ0.2から0.3 eV程度小さくなり、フェルミ準位が浅くなっていることがわかった。
熱起電力を併せて測定した結果、未処理のCNTがプラスのゼーベック係数(p型極性)を示したのに対し、DMFに浸漬したCNTはマイナスのゼーベック係数(n型極性)を示した。この結果とAC-3のデータより、DMFをCNTに吸着させると、DMFのドーピング効果によってCNTの多数キャリアがホールから電子に変化することがわかった。
Fig. 1 DMFドーピングしたCNTの光電子分光結果

4.その他・特記事項(Others)
「2019年度試行的利用の採択を受け実施した」
NAISTの河合壯教授、清水洋特任教授及び技術職員淺野間文夫氏に御担当いただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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