利用報告書
課題番号 :S-15-MS-0040
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :有機半導体・無機半導体界面のエネルギー準位接合波数分解測定
Program Title (English) :Momentum-resolved energy-level alignment at organic-inorganic semiconductor interfaces
利用者名(日本語) :須田 洋輔1), 吉田 弘幸1)
Username (English) :Y. Suda1), H. Yoshida1)
所属名(日本語) :1) 千葉大学大学院融合科学研究科
Affiliation (English) :1) Chiba University
1.概要(Summary )
有機分子の半導体特性を利用した分子デバイス開発研究が賑わっている。基礎学術的視点において、吸着分子とその成膜基板などの異物質界面の電子状態測定は、界面エネルギー準位接合機構を理解するうえで必須である。特に規定された表面場を利用することで、界面における電子結合エネルギー、運動量や有効質量の変化などを定量的に見積もり、界面電荷移動量を三次元逆空間解析することで、弱い結合力(吸着力)の定量化(電荷分布の異方性評価)が行え、弱相互作用系の学理を構築することができる。本研究では多環芳香族化合物の配向単分子層膜を層状無機化合物基板上に成膜し、温度および界面吸着構造をパラメータとして角度分解光電子分光法(ARUPS)により界面電子状態の測定を行う。特に未踏領域として電子状態の詳細な二次元運動量分布測定を狙う。
これまでエネルギー準位接合機構の研究には有機半導体と金属基板界面が主たる研究対象であったが、基板として無機半導体を用いることで、基板の価電子帯エネルギー分散関係を新たな相互作用マーカーとして利用することができる。すなわち界面バンドベンディング(準位シフト)現象を、運動量(波数)分解した二次元光電子分光測定により視覚化し準位接合を議論する。一般的に基板材料は明瞭なバンド分散関係を持ち、電子の結合エネルギーと運動量に依存して状態密度が異なる。本質的に分子膜との界面における電荷移動量には波数依存性が生じるはずであるが、金属基板においては自由電子の緩和が速く、分子膜の局在系電子状態変化からだけでは、界面電荷移動の描像を得ることは極めて難しい。一方、無機層状化合物を使うことで、分散関係を二次元単純化でき、さらに電荷移動に応じた化学ポテンシャルの変化として、基板各準位のバンド構造変化が明瞭に観測されると期待される。本研究では状態密度に応じた電荷移動量を定量的に評価することで、分子性半導体機能の本質を明らかにすることを目的とした。
2.実験(Experimental)
真空蒸着法により硫化ゲルマニウム(GeS)基板上に2種類の有機半導体、NTCDA単分子層およびDIP単分子層配向膜を作製し、バンド構造を比較検討した。室温における吸着構造(分子配向)はMCPLEEDにより評価し、単分子層膜試料に対して二次元ARUPS測定により電子状態を評価した。電子状態の二次元マップ測定にはVG-SCIENTA社製の最先端分析器DA30を有する「機能性材料バンド構造顕微分析システム」を利用した。解良教授グループの実験補助を得て実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
最新分析器DA30装置を用いて電子状態を二次元波数空間で精密にスキャンする必要があるが、測定ノウハウが未知数であり、有機薄膜については困難を極めた。今年度は第一段階として基板電子状態について二次元光電子像の取得に成功した。有機無機界面における電子状態変化を観測するためには、次段階としてより高度に配向した有機単分子層単結晶膜の成膜が必須条件であり、分子線真空蒸着法における本装置固有の条件出しが重要であることが分かった。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







