利用報告書

有機磁性体の低温構造と量子磁気状態の解明研究
細越裕子, 三好克典,上本菜央, 瀬戸川大喜, 沖田大輝, 高橋大輝, 谷口慶
大阪府立大学大学院理学系研究科

課題番号 :S-19-MS-1032
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機磁性体の低温構造と量子磁気状態の解明研究
Program Title (English) :Study on the low-temperature crystal structure and quantum magnetic properties of organic radicals
利用者名(日本語) :細越裕子, 三好克典,上本菜央, 瀬戸川大喜, 沖田大輝, 高橋大輝, 谷口慶
Username (English) :Y. Hosokoshi, K. Miyoshi, N. Uemoto, H. Setogawa, T. Okita, H. Takahashi, K. Taniguchi
所属名(日本語) :大阪府立大学大学院理学系研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Osaka Prefecture University.

1.概要(Summary )
有機ラジカル磁性体は、スピン‐軌道相互作用の小さい理想的なハイゼンベルグスピン系を形成するため、その量子磁気状態に興味が持たれている。有機結晶は温度低下に伴う格子収縮率が大きいため、低温磁性の理解には低温構造を明らかにすることが重要である。本研究は、有機ラジカルを用いた分子性磁性体の低温構造解析から磁気モデルを構築し、量子磁気状態を考察した。単結晶電子スピン共鳴から、磁気相互作用を考察した。

2.実験(Experimental)
大阪府立大学において合成した有機ラジカルおよびその錯体結晶について、微小結晶用単結晶X線回折装置Rigaku社 MERCURY HiPiX-AFCを用いて、低温構造解析を行った。結晶をガラスキャピラリーに接着剤でマウントし25 Kまで冷却した。X線回折装置Rigaku社 MERCURY CCD-1・R-AXIS IVを用いて単結晶軸方位を決定し、電子スピン共鳴装置を用いたXバンド測定を行った。Bruker社EMXとクライオスタットESR900の組み合わせで3.8K~室温、Bruker社E500とクライオスタットESR910の組み合わせで1.5~4.2Kの測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
有機ラジカルを基盤とする分子性結晶の低温構造解析を多数行い、梯子鎖物質の電子スピン共鳴実験を行った。ここでは3-(pyridin-2-yl)-1,5-bis(4-fluorophenyl)verdazylのZn(hfac)2錯体(hfac= 1,1,1,5,5,5-hexafluoro-acetylacetonate)について述べる。単結晶構造解析の結果、フェルダジルラジカルは3種類の分子間接近を持ち、これによりS = 1/2蜂の巣格子が形成された。低温の結晶構造座標値を使って分子軌道計算を行い、分子間相互作用を見積もったところ、2種類の反強磁性相互作用と1つは強磁性相互作用と予想された。また、非磁性Zn(hfac)2がスペーサーとなり、面間相互作用は1/50程度以下と予想された。比熱測定の結果、0.3 Kまで相転移は観測されなかった。量子モンテカルロ法による数値計算を行い、磁化率、磁化曲線、比熱を解析し、系の二次元性を評価した。

4.その他・特記事項(Others)
機器利用は分子科学研究所 岡野芳則氏、藤原基靖氏の支援を受けた。科研費19H04550の援助を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Y. Kono, T. Okabe, N. Uemoto, Y. Iwasaki, Y. Hosokoshi, S. Kittaka, T. Sakakibara, and H. Yamaguchi, Phys. Rev. B, vol.101 (2020) 014437/1-6.
(2) S. Miyamoto, Y. Iwasaki, N. Uemoto, Y. Hosokoshi, H. Fujiwara, S. Shimono, and H. Yamaguchi, Phys. Rev. Mater., vol.3 (2019) 064410/1-7.
(3) K. Miyoshi, T. Ono, H. Nojiri, and Y. Hosokoshi, nternational Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019, 令和元年9月25日.

6.関連特許(Patent)
なし

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