利用報告書

木曽ヒノキ精油成分の機能性に関する分子挙動の解析
野口剛, 中川信治
夢木香株式会社

課題番号 :S-15-NU-0009
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :木曽ヒノキ精油成分の機能性に関する分子挙動の解析
Program Title (English) :Analysis of the molecular behavior related to the functionality of the Kiso hinoki essential
oil components
利用者名(日本語) :野口剛, 中川信治
Username (English) :Tsuyoshi Noguchi, Shinji Nakagawa
所属名(日本語) :夢木香株式会社
Affiliation (English) :YUMEKIKOU, Co, Ltd.

1.概要(Summary )
 木曽ヒノキ精油が有する消臭機能の作用メカニズムを化学的に解明すべく、臭い成分としてイソ吉草酸を選定し、檜精油を構成する各種成分の消臭能の違いを把握することを目的に検討を進めた。その結果、精油成分の1つであるα-テルピネオールがイソ吉草酸と相互作用することがラマンスペクトルより確認された。α-テルピネオールはイソ吉草酸の消臭力も高い結果が確認され、化学的な相互作用との関係が示唆される結果が得られた。

2.実験(Experimental)
 ヒノキ精油成分の代表的成分であるα-テルピネオール、α-ピネン、ミルセンとイソ吉草酸を混合し、1H NMRおよびラマン分光においてスペクトルの変化を評価した。1H NMRはAgilent社製UNITY500を用い、できるだけバルクでの混合状態としながら、ロック溶媒としてDMSO-d6を使用して測定した。ラマンスペクトルは、JASCO社製NRS-1000を用い、混合試料をガラス製キャピラリーに封管して測定した。消臭実験は、消臭実験用バッグに、室温飽和蒸気圧に調整したイソ吉草酸ガスを一定量封入し、ガス検知管によりイソ吉草酸濃度を測定し、消臭成分を試料バッグに注入した30分後に再びガス検知管で濃度測定することで行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
イソ吉草酸とα-テルピネオール混合系のラマンスペクトルを図1に示す。イソ吉草酸の1650cm-1付近にあるピークは、カルボン酸のカルボニル伸縮ピークであるが、α-テルピネオールとの混合で、1700cm-1を越えて高周波数側にシフトしている。これは、α-テルピネオールの水酸基により、イソ吉草酸の安定な2分子会合が切れ、カルボニルの2重結合性が増して振動エネルギーが増したことによると考えられる。一方、イソ吉草酸に対するヒノキ精油成分の消臭実験では、α-テルピネオールの消臭力は、α-ピネンやミルセンよりも高い結果が得られた。α-テルピネオールがイソ吉草酸の会合を切る強い相互作用を有していることが、消臭能の高さの要因となっているのかもしれない。

図1.  α-テルピネオールを加えたときのイソ吉草酸のラマンスペクトル変化

4.その他・特記事項(Others)
本検討の遂行には、JST松山マネージャーの支援を得た。測定に際しては、名古屋大学坂口特任教授、近藤一元氏、伊藤始氏に協力をいただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 野口剛、中川信治、坂口佳充、松山豊, 木曽ひのき精油成分の機能性に関する分子挙動の解析〜ひのき精油の成分α- テルピネオール等がイソ吉草酸(悪臭成
分)の分子会合を切断し溶解〜、NanotechJapan Bulletin Vol.8, No.4(2015)

6.関連特許(Patent)
(1) 出願済み

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.