利用報告書

植物の気孔形成に影響を与える化合物Bubblinの誘導体の合成
嶋田知生
京都大学大学院理学研究科

課題番号 :S-16-CT-0087
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :植物の気孔形成に影響を与える化合物Bubblinの誘導体の合成
Program Title (English) :Chemical synthesis of bubblin derivatives that affect stomatal development
利用者名(日本語) :嶋田知生
Username (English) :Tomoo Shimada
所属名(日本語) :京都大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Kyoto University

1.概要(Summary )
私たちは,植物の気孔形成に影響を与える新規化合物であるピリジン-チアゾールの一種を発見し,Bubblinと命名した.Bubblinが引き起こす気孔形成異常の原因はメリステモイドと呼ばれる気孔前駆細胞の分裂異常であることが分かってきた.本利用課題では,Bubblinが細胞分裂異常を引き起こす作用機序を明らかとするため,蛍光標識及びビオチン標識するためのBubblinの誘導体の合成を行った.

2.実験(Experimental)
Bubblin誘導体の合成に先立ち,Bubblin自身の合成を以下の通り行った.まず,Thionicotinamideと4-bromophenacyl bromideの混合物を窒素封入下でエタノール中80℃2時間refluxした.冷却後,酢酸ナトリウムを含む水を注ぎ,ろ過し再結晶化によりBubblinを合成した.合成したBubblinを10および50 μM含む培養液でシロイヌナズナを生育させ,気孔の形成パターンを観察した.

3.結果と考察(Results and Discussion)
合成Bubblinの気孔形成に与える影響を観察した結果,市販品のBubblinと同程度の活性を示すことが確認された.このことから,Bubblinの活性は市販品中の夾雑物によるものではないことが示唆された.今後は,このBubblinを元に誘導体の合成が可能になると思われる.蛍光標識化Bubblinが合成できれば,ライブイメージングによりBubblinの相互作用因子(ターゲット分子)の細胞内局在性を明らかにできる.また,ビオチン標識化Bubblinが合成できれば,アビジンビーズを用いたプルダウン実験を行い,Bubblinのターゲットを明らかにしたいと考えている.

4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
Y, Sakai et al., Development, 144(3):499-506 (2017)

・謝辞
本研究の遂行にあたりまして,千歳科学技術大学の田中汰久冶様,今井敏郎客員教授,大越研人教授にBubblinを合成して頂きました.この場を借りて感謝の意を表します.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし

6.関連特許(Patent)
該当なし

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