利用報告書

機能性低分子の構造解析
請川 智哉1), 小林 嵩明1)
1) 住友化学株式会社

課題番号(Application Number):S-16-NR-0047
利用形態(Type of Service)  :技術代行
利用課題名(日本語)     :機能性低分子の構造解析
Program Title (English) :Functional low molecular structure analysis
利用者名(日本語)  :請川 智哉1), 小林 嵩明1)
Username (English)      :T.Ukegawa 1),T,Kobayashi1)
所属名(日本語)   :1) 住友化学株式会社
Affiliation (English)      :1)Sumitomo Chemical Co.,Ltd.

1.概要(Summary)
単結晶X線回折測定は有機分子の構造決定に用いられる強力な手法である。本手法では結晶中の原子の電子密度を観測することにより分子の座標を直接決定することが可能であるが、得られる電子密度からのみでは同周期の元素を区別することができない。そのため原子間の結合角や結合長などの間接的な情報から原子を特定する必要がある。しかし一部の分子ではディスオーダーにより結合長の議論が困難な場合があり、このようなケースでは分子運動を抑えるための冷却測定が有効な場合が多い。本研究では参考文献をもとにモデル化合物として(E)-スチルベンの結晶構造を取得し、現在の使用環境でのオレフィン二重結合の結合長を求めて冷却測定の有効性を確認した。

2.実験(Experimental)
東京化成工業株式会社より入手した(E)-スチルベンの結晶を試料冷却装置(液体窒素温度)を用いて123 Kに冷却し、ValiMax RAPID RA-Micro7(Mo-K線源)によって測定を実施した。得られた構造をShelxt及びshelxlを用いて最適化した。最適化後のcifファイルより結合長を確認した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
結晶構造中にはスチルベン分子が2分子観測された(図1)。以下に結晶構造(thermal ellipsoid)を示す。また、表1に結晶構造情報を示す。
オレフィン二重結合の結合長はそれぞれ1.326(3)Å、1.337(3)Åであった。これは計算(MMP2)によって得られた結合長1.356Åと矛盾しない結果であった。文献の結果通り、冷却測定の有効性が確認された。

図1 スチルベンの結晶構造(thermal ellipsoid)

表1 (E)-スチルベンの結晶構造情報
Space group P21/c
a 15.4531(6)
b 5.66335(18)
c 12.2912(4)
 112.064(8)
R1 0.0467

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
Topics in Stereochemistry, Volume 25, 31-47.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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