利用報告書

機能性有機結晶の構造と物性に関する研究
白旗 崇1), 古田 圭介1), 片山 翔伍1), 城下 雄亮1)
1) 愛媛大学大学院理工学研究科

課題番号 :S-16-MS-1022
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :機能性有機結晶の構造と物性に関する研究
Program Title (English) :Structural and physical properties of organic crystalline materials
利用者名(日本語) :白旗 崇1), 古田 圭介1), 片山 翔伍1), 城下 雄亮1)
Username (English) :T. Shirahata1), K. Furuta1), S. Katayama1), Y. Shiroshita1)
所属名(日本語) :1) 愛媛大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and Engineering, Ehime Unversity

1.概要(Summary )
エチレンジオキシ基を有するTTF系電子供与体は光誘起相転移など興味深い物性を示す電荷移動錯体を与える。本研究課題では図1に示す新規ドナー1を用いてラジカルカチオン塩を作製し、その結晶構造を明らかにした。

2.実験(Experimental)
リガク・CCD型極微小結晶用単結晶X線回折装置・MERCURY CCD (CCD-3)
新規ドナー1のPF6塩の極微小結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。吹き付け型の低温装置を用いて−173 °C(100 K)に試料を冷却して高精度の回折データを取得した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
新規ドナー1のようなTTFユニットがメチレンジチオ基で架橋されたTTFオリゴマー分子の酸化状態の構造は、TTFユニットがface-to-face様式で積層していることが電気化学的性質および酸化種の電子スペクトルから予想されている。これまでにTTFオリゴマー分子の酸化状態の構造をX線結晶構造解析で決定する試みが行われてきたが、前述の予想を裏付ける結果は得られていなかった。これを解決する目的で、良質の結晶を与えやすいエチレンジオキシ基を導入したオリゴマーを用いてラジカルカチオン塩の作成を検討したところ、異なるTTF誘導体をユニットとする1のPF6塩が良質の単結晶として得られた。
図2に (1)PF6 の結晶構造および分子の積層様式を示す。分子1は分子内のTTFユニットがface-to-face様式で積層しており、電気化学的性質からの予測と一致した構造であることが明らかとなった。結合長から各TTFユニットの電荷を見積もると1,3-ジチオール環が折れ曲がったTTFユニットに正電荷が主に分布していることが示唆された。すなわち、分子内で電荷が不均化している状態であると考えられる。今後、光などの刺激による電荷不均化の融解について検討する予定である。

図2. (1)PF6の (a) 結晶構造(a軸投影)および (b) 積層様式。

4.その他・特記事項(Others)
【謝辞】
本研究はJSPS科研費26410095および愛媛大学電池材料開発研究ユニットの助成を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. Hasegawa, K.-i. Nakamura, S. Tokunaga, Y. Baba, R. Shiba, T. Shirahata, Y. Mazaki and Y. Misaki, Chem. Eur. J., Vol. 22(2016)p.p.10090-10101.
(2) 徳永 早貴, 増田 拓也, 白旗 崇, 御崎 洋二, 第10回有機π電子系シンポジウム, 平成28年12月16日.

6.関連特許(Patent)
なし

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