利用報告書
課題番号(Application Number):S-16-NR-0029
利用形態(Type of Service):共同研究
利用課題名(日本語) :正五角形と正六角形の共集合によるベシクル状集合体の形成
Program Title (English) : Spherical Vesicles Formed by Co-Assembly of Pillar[5]quinone with Pillar[6]arene
利用者名(日本語) :生越 友樹1)
Username (English) :T. Ogoshi1)
所属名(日本語) :1) 金沢大学理工研究域
Affiliation (English) :1) Institute of Science and Engineering, Kanazawa University
1.概要(Summary)
本利用課題では、バイオメディカルな材料として応用可能な生体適合性を有するベシクルの新規合成法を目指して、6角柱ピラー[6]アレーンと5角柱ピラー[5]キノンの共集合によるベシクル集合体の創製を行った。
2.実験(Experimental)
水酸基を12個有するPillar[6]areneと5つのベンゾキノンユニットからなるPillar[5]quinoneを合成した(図1)。両者を混合した時に形成する超分子集合体の構造にについて、本研究課題支援機器TEMを利用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
6角柱構造のピラー[6]アレーンを集積化させることで2次元シート構造の形成に成功した。より高次な集合体形成を目指し、フラーレンC60を模倣した3次元ベシクル構造の形成を試みた。フラーレンは、6角形構造の中に5角形構造が存在することで曲面を与え球状の構造となる。このことから5角柱構造のピラー[5]アレーンが6角柱構造のピラー[6]アレーンが形成する2次元シートに組み込まれれば、フラーレン様の球状集合体が得られると予測した。対称性の低い5角柱ピラー[5]アレーンが6角柱ピラー[6]アレーンからなる2次元シートに組み込まれるように、5つのベンゾキノンからなるピラー[5]キノンを用いた。ピラー[6]アレーンが過剰もしくはピラー[6]アレーンのみの場合では、6角柱分子ピラー[6]アレーンが敷き詰まることにより6角形の結晶が得られた(図1)。一方でピラー[5]キノンが過剰もしくはピラー[5]キノンのみの場合では、ファイバー構造を形成した。一方、組成をフラーレンの比(ピラー[6]アレーン : ピラー[5]キノン = 20:12)で混合すると球状の集合体が得られた。本研究課題支援機器TEM観察からも中空の球状構造が確認され、ベシクル構造を形成していることが分かった。通常ベシクル状分子は両親媒性分子の集合によって形成される。一方で本研究では、5角形と6角形を混合して得られるベシクルであり、幾何学的デザインに基づく新しいベシクル形成法であるといえる。
4.その他・特記事項(Others)
Pillar[5]arene: 2008年に研究責任者のグループにより初めて合成され、命名された環状ホスト分子。柱“Pillar”構造であることから、研究責任者のグループはパルテノン神殿の柱部分をモチーフとしてPillar[5]areneと名付けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Ogoshi, T.; Sueto, R.; Yoshikoshi, K.; Yasuhara, K.; Yamagishi, T. “Spherical Vesicles Formed by Co-Assembly of Cyclic Pentagonal Pillar[5]quinone with Cyclic Hexagonal Pillar[6]arene”, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 8064-8067.
(2) Ogoshi, T. “Pillar[n]arenes: Simple Molecular Receptors to Bulk-State Supramolecular Materials” ICREA Conference on Functional Nanocontainers, 2016年10月20日, CalixaForum Auditorium Tarragona, Spain (Invited Lecture)
6.関連特許(Patent)
なし







