利用報告書

気孔形成に影響を与える化合物Bubblinの誘導体の合成
嶋田知生(京都大学大学院理学研究科)

課題番号 :S-20-CT-0087
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :気孔形成に影響を与える化合物Bubblinの誘導体の合成
Program Title (English) :Chemical synthesis of bubblin derivatives that affect stomatal development
利用者名(日本語) :嶋田知生
Username (English) :T. Shimada
所属名(日本語) :京都大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Kyoto University

1.概要(Summary )
 新規化合物Bubblinは、植物の気孔形成に影響を与えるピリジン-チアゾールの一種である。植物体にBubblinを処理すると、気孔幹細胞メリスメモイドに作用し、その非対称分裂をかく乱することで気孔のクラスター構造を誘導する。本利用課題では、Bubblinの作用機序を明らかとするため、ナノテクノロジープラットフォーム支援事業の共同研究により、Bubblin誘導体の合成とその解析を行った。

2.実験(Experimental)
 今年度はR44やR14など新たに5種類のBubblin誘導体の合成に成功した。R44はBubblinとビオチンをクリック反応で繋ぐことを想定し、Bubblinのチアゾール環の5位に2-アジドエチル基を導入したものである。R14はピリジン環にアミド基を導入したものである。これらの誘導体をシロイヌナズナ野生型系統Col-0株に処理し、気孔形成パターンを観察した。また、Bubblinに非感受性である野生型系統Ga-2株についても同様に処理し観察を行った。さらに、アミノ基をもつ誘導体R03をAffigel-10担体にカップリングし、シロイヌナズナ幼植物体の粗抽出液から結合するタンパク質の同定を試みた。合成標品の同定にはNMR(Avance NEO 400, Bruker社, 公立千歳科学技術大学登録装置)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 チアゾール環に2-アジドエチル基を導入したR44、R45、R46は、Bubblinと同程度に気孔クラスターを誘導する活性が見られた。アフィニティーカラムの作製に供する誘導体の合成に成功したといえる。一方、R14とR15の気孔クラスター誘導活性は著しく低下していた。
 シロイヌナズナ幼植物体から抽出した粗タンパク質溶液を、R03をカップリングさせたAffigel-10カラムに供し、結合画分を電気泳動後銀染色したが、特異的に結合しているタンパク質は見いだされなかった。R03の気孔クラスター誘導能が低下していることから、今後はR44またはアミノ基誘導体を用いたアフィニティーカラムにより、Bubblin標的因子の同定を目指す。

4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
Y, Sakai et al., Development, 144(3):499-506 (2017)

・謝辞
本研究の遂行にあたりまして、公立千歳科学技術大学の今井敏郎客員教授、大越研人教授にBubblin誘導体を合成して頂きました。この場を借りて感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし
6.関連特許(Patent)
該当なし

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