利用報告書

気液界面で作製した金属錯体ナノシート(MOF-NS)の元素分析及び電子状態解析
大畑考司、上林秀匡、渕上晃輝、柴田ゆうき、生垣賢
大阪府立大学大学院工学研究科物質化学専攻マテリアル工学分野

課題番号(Application Number):S-17-NR-0054
利用形態(Type of Service):共同研究
利用課題名(日本語) :気液界面で作製した金属錯体ナノシート(MOF-NS)の元素分析及び電子状態解析Program Title (English) :Elemental analysis and electronic states of metal complex nanosheets synthesized
at air/liquid interfaces
利用者名(日本語) :大畑考司、上林秀匡、渕上晃輝、柴田ゆうき、生垣賢
Username (English) :T. Ohata, H. Uebayashi, K. Fuchigami, Y. Shibata, K. Ikigaki
所属名(日本語) :大阪府立大学大学院工学研究科物質化学専攻マテリアル工学分野
Affiliation (English) :Depertment of Material Science, Osaka Prefecture University

1. 概要(Summary)
近年、有機配位子と金属イオンから構成される
metal-organic framework (MOF)が有機配位子と金属イオンの組み合わせによる機能性の付与が可能であるという金属錯体の特長に加え、細孔を有することから新たな機能の発現が期待されており、分離膜や電子デバイスなどの様々な分野での応用が期待されている。MOFは一般的に水熱合成等で粉末状で得られるが、電子デバイス等へ応用を検討する際にはナノシート(NS)を作製する必要がある。
 本研究では、MOFの電子デバイスへの応用を主眼とし、MOF-NS結晶を作製し、その電気的特性の解明を目的とする。有機配位子にπ電子を有するトリフェニレン誘導体と金属イオンに平面四配位を形成するニッケルイオンを採用した。また、NS結晶作製手法にニッケルイオン水溶液上にトリフェニレン誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液を展開することにより、気液界面にMOF-NSが合成される手法を採用した。これまでに、同元素で構成されるMOF粉末が報告され、その配位状態が明らかにされているが、本研究で採用した手法においても同様の配位状態になることは未解明である。このMOF-NSの電気的特性解明及びナノシート化に伴う特性への影響を解明するためにはMOF-NSの電子状態(金属イオンの価数)、配位状態、欠陥の有無を得る必要がある。それら内部状態を得るために多機能走査型X線光電子分光分析装置を用いて解明することを実施目的とした。
2.実験(Experimental)
気液界面に形成されたMOF-NSをシリコン基板上に複数回転写することにより作製したサンプルをX線光電子分光法 (XPS)を用いることにより、配位状態及び金属イオンの価数を調べた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 シリコン基板上に転写したMOF-NS、トリフェニレン誘導体(TD)のみのNS、同構成元素の既報の合成法で合成したMOF粉末の測定結果を以下の図1に示す。図1(a)から、MOF-NS及びMOF粉末共にニッケルイオンの存在が確認され、気液界面において錯形成反応が生じていることが考えられた。更にニッケルイオンの存在状態を確認するためにNi2p3/2領域及びN1s領域を詳細に調べ、ニッケルの酸化数が2価である塩化ニッケルのスペクトルと比較した結果(図1(b),(c))、錯形成することによりNi2p3/2のピークが低束縛エネルギー側へシフトしていることが分かった。一方で、N1sのピークは高束縛エネルギー側へのシフトが確認された。これらの結果から、錯形成時にTDからニッケルイオンへ電荷移動が生じていることが示唆された。また、NSと粉末のスペクトルを比較した結果、Ni2p3/2とN1sのピークトップの位置が同じ束縛エネルギーの値であり、同様のピーク形状であったために、気液界面で合成したNSの場合も同様の配位状態になっており、ニッケルイオンの価数は+2であることが示唆された。

4.その他・特記事項(Others)
本研究は奈良先端科学技術大学院大学NAISTナノテクノロジープラットフォームにより支援を受けた。特に、岡島技術職員、浅野間技術職員に対応いただいた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
T. Ohata and R. Makiura, 第9回関西無機機能性材料研究会, 平成30年1月20日
6.関連特許(Patent)
なし

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