利用報告書
課題番号 :S-19-OS-0025
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :水素原子検出器素子の試作
Program Title (English) :Fabrication of prototype atomic hydrogen detector
利用者名(日本語) :竹森友紀1), 神戸正雄1)2)
Username (English) :Y. Takemori1), M. Gohdo1)2)
所属名(日本語) :1)大阪市立大学大学院工学研究科, 2) 大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) :1)Grad. Sc. Eng., Osaka City University, 2) ISIR, Osaka University
1.概要(Summary )
原子状水素は新しいドライエッチングのエッチャントとして研究を進めている。原子状水素はエッチング対象に配線された金属があっても、酸化や腐食等を引き起こすことなく、有機物だけが除去される点で有用である。ところが、原子状水素の照射量を見積もることは、低真空下で濃度が低く、分子軌道がないので電子吸収や振動吸収がなく、直接測定は難しい。報告されているのは、原子励起し、その原子発光を定量する方法で直接的な測定で優れているが、真空紫外励起用レーザーが必要でありどこでもできるわけではない。そこで、酸化タングステン(WO3)が原子状水素によりほぼ無色から青色に可逆的に着色することが報告されており、この性質に注目し、相対原子状水素濃度の検出器として用いることを検討した。WO3が原子状水素検出器として使えるようになると、例えば3インチ石英基板上にWO3を成膜すれば、ガス雰囲気の検出ではなく、エッチング対象の照射量として、その空間的な分布も見積もれることになる。原子状水素の量の見積もりは、紫外可視分光光度計で行うことができる。
2.実験(Experimental)
【使用した主な装置】
S04 薄膜X線回折装置(Ultima IV, Rigaku)
S10 RFスパッタ装置(SVC-700LRF, サンユー電子)
S15 走査型プローブ顕微鏡(AFM5000, Hitachi)
RFスパッタ装置でタングステン(2インチφ)ターゲットとし、石英板(1.5 mm厚10×20 mm)に、~0.2 Pa Ar+O2混合ガス(O2比率40%)、100 Wにて、サンプル温度、室温または300 ℃で10分間スパッタし成膜した。堆積速度は4 nm/minだった。得られたWO3/SiO2を電気炉で、酸素雰囲気下650 ℃、1時間アニーリングした。アニーリングの有無、スパッタ温度2種の計4種のWO3膜を作成した。結晶相をXRDで、表面状態をAFMで測定した。また、膜厚はSEMで計測した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
XRD測定から、室温スパッタ、熱処理ありのWO3だけが結晶性の回折を与え、a晶であった。表面状態はAFMによりFig.1のとおりで、a晶WO3のみで結晶ドメインを与えていた。ただし、スパッタ室温、アニール無しで緻密でなめらかに成膜されていたものが、凹凸が増大し、膜厚も減少したことには注意を要する。これは、原子状水素検出において、その表面積が影響を与えると考えられるからである。
Fig. 1 AFM images of WO3.
4.その他・特記事項(Others)
技術代行および装置使用方法に関してご説明頂きました大阪大学分子・物質合成PFの支援員の方々に厚く感謝致します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。