利用報告書

液晶性ビオロゲンの電気化学測定
中 裕美子
東京理科大学

課題番号 :S-16-MS-0022
利用形態 :技術相談
利用課題名(日本語) :液晶性ビオロゲンの電気化学測定
Program Title (English) :Electrochemical Analysis of Liquid-Crystalline Viologens
利用者名(日本語) :中 裕美子
Username (English) :Yumiko NAKA
所属名(日本語) :東京理科大学
Affiliation (English) :Tokyo University of Science

1.概要(Summary )
4,4’-Dipylidineの窒素にアルキル鎖が結合しているビオロゲンは,光や酸化還元剤などの様々な外部要因によって可逆的な酸化還元反応を示す化合物の一つであり,酸化還元反応に対する高い耐久性が知られている。このビオロゲンを光受光部位 (アンテナ) として用いれば,光機能性材料の高耐久化が実現できる可能性がある。ビオロゲンを基本骨格とした化合物に液晶性を付与すれば,液晶の性質を利用した新規光機能性材料の創製が見込まれる。これまでにわれわれは,液晶性を示すビオロゲン化合物の合成に成功し,液晶性ビオロゲンをフィルム状態 (バルク状態) において光照射を行うと,液晶相温度範囲において光反応が進行することを確認した。この反応がビオロゲンの還元反応に由来するものであるかを確認するため,分子科学研究所 特任准教授 小林先生に電気化学的測定に関する技術相談をおこなった。
2.実験(Experimental)
技術相談を行い,まずサイクリックボルタンメトリー測定を行うことになった。温度による相変化に伴うレドックス反応のしやすさを検討するため,測定サンプルを加熱する必要があった。試料はフィルム状態であり,可能であれば光照射できるセルを設計した。先行実験において,試料を二枚のガラス板に挟み大気との接触面を減らした場合に光反応の進行が確認された。このことから電気化学測定においても可能な限り不活性雰囲気下を保つ必要があると予想された。以上を踏まえ,櫛型電極付きガラス板を購入し,銀/塩化銀電極を基準とした三電極系測定用セルを作製することにした。櫛型電極付きガラス板の上に試料を載せ,等方相温度まで加熱し試料を融解させた後,石英基板をのせてセルとした。超音波はんだ付け装置にて導線をつけて測定用サンプルとした。ホットステージで測定用サンプルを液晶相温度まで加熱し,ポテンショガルバノスタット(Bio-Logic社,VPS-300)に繋げて,サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。ボルタムグラムは観察されるもののノイズが大きかった。ノイズは電極面が小さすぎるためと考え,Pt電極を用いた二電極系セルを試行した。電極面積が大きくなったことにより,ボルタムグラムのノイズは激減した。しかしながら,大気の遮断が不十分であるため酸素による酸化反応の進行(電気的な酸化反応以外も進行する)も考えられる。また,二電極系であるため印加している電位が不明である。試行実験を行うことができたのは実質1日であったが,改善しなければならない点が明確になった。

4.その他・特記事項(Others)
技術相談:小林玄器 特任准教授

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 中川理紗, 中裕美子, レバンコア, 佐々木健夫, 2016年日本液晶学会討論会, 平成28年9月5日.
(2) 伊藤雷, 中裕美子, レバンコア, 佐々木健夫, 2016年日本液晶学会討論会, 平成28年9月5日.

6.関連特許(Patent)
なし

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