利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :溶液中に分散する金属ナノ粒子における界面電位分布に関する研究
Program Title (English) :Study on interfacial potential distribution in metal nanoparticles dispersed in solution
利用者名(日本語) :池永 英司 1),2), 小川智史2), 那須歩果2) , 新井 扶2)
Username (English) :E.Ikenaga1),2), S.Ogawa2) , H.Nasu2) , T.Arai2)
所属名(日本語) :1)名古屋大学 未来材料システム研究所, 2) 名古屋大学工学部エネルギー理工学科
Affiliation (English) :1) IMaSS Nagoya University, 2) Enegineering Nagoya University
1.概要(Summary )
一般的に水溶液中に形成された金属ナノ粒子は互いに凝集し易い。しかし、金属ナノ粒子の触媒効果や電気特性を活用する工業分野や人体への影響を考慮する医療分野へ応用する際、金属ナノ粒子の分散状態を長期的に保つことが必要である[1]。水溶液中に分散する金属ナノ粒子の作製方法としては、主として前駆体の還元によりナノ粒子を得る溶液還元法と、電極の溶出によりナノ粒子を得る液中プラズマ法(SPP)がある。SPP では分散剤を加えていないにも関わらず、ナノ粒子が分散状態を保つ。この主な要因として、固液界面におけるナノ粒子表面の電気二重層の形成が挙げられ、電気二重層の厚さが大きく変化するpH値が等電点である[2]。また先行研究から、溶液中のAuナノ粒子(AuNP)の表面吸着種や粒子径が、等電点近くのpH値によって異なる描像を明らかにしている[3]。くわえて本研究では、様々な金属ナノ粒子における電気二重層のpH依存性を詳細に調べることで、固液界面における電気二重層と等電点の相関を明らかにすることを目的とした。
2.実験(Experimental)
1mM NaCl溶液を基準としてイオン種(Na+,Cl−,H+,OH−)を変えずに電解質水溶液のpH値[pH1.3~11.3]を調製し、各水溶液においてSPPを用いてAu, Ag, Pt-NPを作製した。これら三種共にpH値に依存して着色が様々に異なった。これは主に電気二重層の厚さに相関がある粒子径が異なることが要因である。大塚電子ELSZ-2装置(ナノプラットフォーム事業)を用いて、固液界面における電気二重層の厚さを直接観測が可能なゼータ電位測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にAu, Ag, Pt-NP のpHに依存したゼータ電位測定結果を示す。全体としてAu, AgNPよりも、PtNPはゼータ電位が低く、電気二重層が薄いため凝集し易いことが分かった。またAu, Pt-NPでは、高pH側でゼータ電位が大きくなる傾向がみられるが、AgNPでは高pHで低いゼータ電位を観測している。これは電気二重層の形成に寄与する等電点(pH値)が金属種で異なることを端的に示しており、特にAuとAgでは等電点に顕著な違いがあることを示唆している。このように、電気二重層の形成に寄与する等電点(pH値)が境界条件となり、1mM NaCl溶液中のAu, Ag, Pt-NP分散機構の描像も異なることを明らかにした。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
[1] 神谷秀博, 飯島志行, 粉砕 55, 12 (2012).
[2] M. A. Bratescu et al., J. Phys. Chem. 115, 24569 (2011).
[3] 那須歩果, 名大工学部物理工学科, 卒業論文(2019).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
池永英司、第80回応用物理学会秋季学術講演会招待講演、19p-B31-2、北海道大学 (2019.9/18).
那須歩果、第81回応用物理学会秋季学術講演会、9a-Z24-6、
同志社大学online (2020.9/9).
6.関連特許(Patent) なし。