利用報告書
課題番号 :S-18-CT-0053
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :炭素系素材および炭素系素材含有複合材料の作製と評価
Program Title (English) :Preparation and Characterization of Carbon Materials and Composites
Containing Carbon
利用者名(日本語) :高田知哉, 後村凌我, 泉雅理, 久保康平,栗原麻佑, 高桑征柊
Username (English) :T. Takada, R. Ushiromura, M. Izumi, K. Kubo, M. Kurihara, S. Takakuwa
所属名(日本語) :千歳科学技術大学理工学部応用化学生物学科
Affiliation (English) :Department of Applied Chemistry and Bioscience, Faculty of Science and
Technology, Chitose Institute of Science and Technology
1.概要(Summary )
高分子材料と炭素系素材を複合化させることで,元の高分子材料が有していない機械的強度や電気伝導性,熱伝導性などを付与することができる。利用者らはこれまで,光反応性の高分子と炭素系素材の一種であるカーボンナノチューブを複合化させた材料を作製し,光化学反応によって高分子とカーボンナノチューブ間に化学結合が形成されることを見出してきた。本課題では,高分子とカーボンナノチューブの結合形成が複合材料中のカーボンナノチューブの分散・凝集状態および電気伝導性に及ぼす効果を調べるため,カーボンナノチューブの状態を透過電子顕微鏡(TEM)で観察し,光照射の有無による差異を比較した。
2.実験(Experimental)
対応するビニルモノマーの重合により得たポリ(p-クロロメチル)スチレンと多層カーボンナノチューブをo-ジクロロベンゼン中にて種々の比率で混合し,キセノン光源からの紫外光を照射したのちTEM用グリッド上に滴下・乾燥してTEM観察用の高分子膜を作製した。紫外光を照射しない試料についても同様に作製した。得られたTEM像の画像解析を行い,カーボンナノチューブの画像のフラクタル次元を算出した。また,同様の高分子膜をガラス片上に作製し,デジタルマルチメータにより電気抵抗を測定した。
利用装置:透過電子顕微鏡HITACHI H-7600
3.結果と考察(Results and Discussion)
TEM観察の結果,紫外光照射を行なった材料では未照射の材料に比べてカーボンナノチューブの凝集が顕著であることが見出され,それに伴い電気伝導性も低いことがわかった。このことは,TEM像のフラクタル解析の結果からも裏付けられ,同一組成の試料の比較では紫外光を照射した試料の方が未照射試料よりもフラクタル次元が小さく,材料全体でのカーボンナノチューブの分散の度合いが低いことがわかった。ポリ(p-クロロメチル)スチレンとカーボンナノチューブとの光化学反応(クロロメチル基からのラジカル生成とカーボンナノチューブへの攻撃)により化学結合が形成されることはすでにわかっており,化学結合形成によって両者の絡み合いが強まることでカーボンナノチューブが束縛され,分散が抑制されたために電気伝導性も低下したと推測している。
4.その他・特記事項(Others)
本課題は,科学研究費基盤研究(C)(No. 16K06834)の研究課題に関するものである。本課題でのTEM観察に際して技術的な支援(観察時の操作方法の指示や助言,使用時の事前対応など)をいただいた山崎郁乃氏に感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) ポリ(p-クロロメチル)スチレン/MWCNT複合体の電気伝導性に対する紫外線照射の影響, 高田知哉, 後村凌我(千歳科技大), 化学工学会第84年会, 2019年3月, 芝浦工業大学
6.関連特許(Patent)
なし