利用報告書

環境制御顕微画像による電子移動型分極制御物質の物性評価 
金川 慎治(九州大学先導物質化学研究所)

課題番号 :S-20-OS-0064
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :環境制御顕微画像による電子移動型分極制御物質の物性評価 
Program Title (English) :Evaluation of Physical Properties of Polarization Switching Materials by Environmental Control Microscopic Imaging
利用者名(日本語) :金川 慎治
Username (English) :S. Kanegawa
所属名(日本語) :九州大学先導物質化学研究所
Affiliation (English) :Institute for Materials Chemistry and Engineering, Kyushu University

1.概要(Summary )
最近我々が見出した外部刺激による分子内電子移動によって分極変化を示す物質は、その分極変化の機構が全く新しいことから基礎科学的に非常に興味深い。一方で、その駆動原理から超高速光メモリや高感度温度センサーなどへの応用が期待される。しかしながら詳細な物性の解明は今後の重要な課題である。今回、大阪大学ナノテクノロジープラットフォームの装置を利用して、電子移動型分極制御物質 [(Co(cth))(Ga(cth))(μ-dhbq)](PF6)3:[CoGa](cth, dhbqは配位子)結晶の表面観察及び表面電位マッピングによる分極情報を得ることを試みた。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S15 走査型プローブ顕微鏡(E-sweep)

【実験方法】
走査型プローブ顕微鏡に異核複核錯体[CoGa]単結晶をマウントし、室温における結晶表面像及びKFMによる表面電位像を観察した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
異核複核錯体[CoGa]は200 K付近で高温側[CoII-dhbq-GaIII]⇆低温側[CoIII-dhsq-GaIII]の電子状態に対応する分子内電子移動を示す。さらに、単結晶構造解析から、[CoGa]は極性点群の空間群で結晶化しており、さらに電子移動方向はすべての分子で同じ向きであったことから、[CoGa]は分子内電子移動型分極制御物質であることが強く期待される。本報告では、[CoGa]単結晶の室温での形状観察と表面電位分布図の取得に成功したことを報告する。[CoGa]単結晶(010)面の室温観察結果をFig.1に示す。観察は大気圧下、5 mm角の範囲で行った。観察範囲内で結晶表面には高さ166 μm程度のおうとつがみられたものの、比較的きれいな表面となっていることが分かった。一方で、温度制御を行うために減圧環境での観察を試みたが、装置が非常に不安定で観察には至らなかった。これはプローブのばね定数といった測定条件や結晶表面の強い分極の影響等が原因の可能性があるが、今後これらについて検討が必要であると考えている。
4.その他・特記事項(Others)
装置使用方法に関してご指導頂きました大阪大学分子・物質合成PFの北島先生に感謝致します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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