利用報告書

生体膜におけるナノ粒子合成に関する研究
越山友美
立命館大学 生命科学部

課題番号 :S-20-NR-0039
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :生体膜におけるナノ粒子合成に関する研究
Program Title (English) :Studies on Nanoparticle Synthesis using Biomembrane
利用者名(日本語) :越山友美
Username (English) :Tomomi Koshiyama
所属名(日本語) :立命館大学 生命科学部
Affiliation (English) :College of Life Sciences, Ritsumeikan University

1.概要(Summary )
様々な物性を示すナノ粒子は、イメージング、人工酵素、薬物輸送体などのバイオテクノロジーへの応用が期待されている。そのため、高い水中分散性と生体親和性を有する蛋白質やベシクル等の生体分子とナノ粒子との複合化は要となる技術であり、これまでに生体分子の内部空間を利用したナノ粒子の合成法が報告されている。前年度に引き続き、本研究ではナノ粒子を合成する場として生体膜を選択し、触媒能を有する金やパラジウムなどの金属ナノ粒子の合成を目指した。金属ナノ粒子の物性や特性は、粒子のサイズ、形状などに大きく依存する。そこで、金属ナノ粒子の積極的なサイズ制御のため、金属結合性ペプチドを修飾した生体膜を作製し、金属イオンと還元剤の添加により金属ナノ粒子の合成を試みた。

2.実験(Experimental)
本実験では、金ナノ粒子の合成と同定を行った。金結合性ペプチドを修飾した生体膜に、金イオン源を添加し、NaBH4により還元した。精製後、各種分光スペクトル測定とTEM測定により形成した金ナノ粒子を解析した。TEM測定では、奈良先端科学技術大学院大学 ナノテクノロジープラットフォームの支援を受け、300kV 透過電子顕微鏡 (JEOL JEM-3100FEF) を用いて金ナノ粒子を観察した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
金結合性ペプチドを修飾した生体膜、および、修飾していない生体膜を用いた金ナノ粒子の合成では、両サンプル共に、NaBH4還元により溶液の色が赤紫色へ変化した。また、吸収スペクトル測定では、520 nm付近に、金ナノ粒子に由来する局所表面プラズモン吸収が観測され、金ナノ粒子の形成が示唆された。また、光学顕微鏡観察では、ペプチド未修飾の生体膜を用いたサンプルでは、生体膜同士が凝集したものが観察された。加えて、300kV 透過電子顕微鏡観察により、金ナノ粒子の粒径サイズ、形状、粒子の分布を解析した。5 ~ 10 nm程度のナノ粒子が多数観察され、また、ナノ粒子同士が連なった構造もみられた。Cryo-TEM画像より生体膜の外部にも金ナノ粒子が存在することも明らかになった。今後は、より詳細なナノ粒子の解析、および、触媒能などの特性評価を進めていく。

4.その他・特記事項(Others)
TEM測定あたり、事前打ち合わせや測定方法に関する有益なご助言をいただいた奈良先端科学技術大学院大学の安原主馬准教授(協力研究支援研究者)、また、測定を行っていただいた技術専門職員の藤田咲子氏、藤原正裕氏と大野智子氏に深く感謝の意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
○越山 友美、奥市健太郎「生体膜空間を利用した金属ナノ粒子合成」日本化学会第101春季年会 (2021)、オンライン開催、2021年3月25日

6.関連特許(Patent)
該当なし

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