利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1076
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :甲状腺の形態形成とヨウ素集積機能の進化に関する研究
Program Title (English) : Evolution of thyroid gland morphogenesis and the iodine accumulation
利用者名(日本語) :窪川かおる1), 鈴木雅一2)
Username (English) :K. Kubokawa1), M. Suzuki2)
所属名(日本語) :1) 東京大学大学院理学系研究科, 2) 静岡大学大学院総合科学技術研究科
Affiliation (English) :1) School of Science, University of TOkyo, 2) Graduate School of Integrated
Science and Technology, Shizuoka University
1.概要(Summary )
甲状腺は、ヨウ素が付加された甲状腺ホルモンの合成器官であり、これを貯蔵・分泌して生体調節や成長に重要な役割を担っている。進化の視点からは、甲状腺は脊椎動物に特有の器官であるため、脊椎動物に進化していく過程で、ヨウ素の細胞への取り込みと甲状腺ホルモンの合成および貯蔵のための濾胞構造が形成されたと考えられる。この甲状腺の進化を明らかにすることは、人類との関係では、胎児期の甲状腺発生の研究につながり、甲状腺欠損、低形成などの疾患の解明にもつながる。
そこで、本研究は、甲状腺の成り立ちと機能の進化を明らかにするため,脊椎動物でもっとも原始的なヌタウナギとさらに原始的なナメクジウオの祖先型器官について,それらの微細構造とヨウ素の分布を調べた.分子科学研究所の低真空分析走査電子顕微鏡(SEM)を利用した電子顕微鏡像と元素マッピングの結果は,甲状腺の祖先型器官のヨウ素濃度が大変低く,検出には至らなかった.その原因には甲状腺の生理状態の個体差の影響と他元素との被りの影響があげられる.今後はヨウ素検出限界の確認と試料数の増加を考えている.さらにヨウ素以外の元素分布を解析することにより,祖先型器官の機能についても検討していきたい.
2.実験(Experimental)
低真空分析走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ SU6600、BrukerAXS FQ5060/XFlash6)を使用し,EDS(EDX)(エネルギー分散型X線分析)による元素マッピングを行った.
試料調整は,ヌタウナギとナメクジウオをブアン固定後に厚さ20μmのパラフィン切片とし,電顕メッシュに乗せて乾燥させた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
甲状腺の祖先器官における甲状腺ホルモン生成のためのヨウ素の取り込み及び蓄積を,ヨウ素測定で検出することは今回できなかった.その原因はヨウ素濃度の低さと酸素検出との被りのためと考えられる.今回は初めての利用であったが,今後は試料調整,個体数,ヨウ素濃度の検討が必要である.試料調整は,ヌタウナギの場合には濾胞からヨウ素が流出した可能性が考えられ,要検討である.個体数は,生理条件の差による個体差の問題を個体数増で解消する予定である.本実験方法は測定時間の短縮と試料保護の点で,多くのサンプルを測定できる利点は大きく,個体差のある試料には向いていると考えている.
ヨウ素以外の元素では,リン,硫黄,酸素など種々の元素分布の結果が得られている(図参照).これらのデータも今後解析していきたいと考えている.
図.ヌタウナギの甲状腺でのリン(赤)と硫黄(青)の分布.濾胞の外縁に沿って円状に分布している.
4.その他・特記事項(Others)
技術指導を中尾聡研究員と酒井雅弘技術職員にしていただいた.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







