利用報告書

界面拡散抑制による反強磁性Mn超薄膜/強磁性Fe超薄膜ヘテロ構造の交換結合特性の制御
宮町俊生1), 中島脩平1), 高橋文雄1),高木康多2,3), 横山利彦2,3) , 小森文夫1)
1) 東京大学物性研究所, 2) 分子科学研究所, 3) 総合研究大学院大学

課題番号 :S-16-MS-2027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :界面拡散抑制による反強磁性Mn超薄膜/強磁性Fe超薄膜ヘテロ構造の交換結合特性の制御
Program Title (English) :Controlling exchange bias properties of Mn/Fe thin film heterostructures by suppressing interfacial diffusion
利用者名(日本語) :宮町俊生1), 中島脩平1), 高橋文雄1),高木康多2,3), 横山利彦2,3) , 小森文夫1)
Username (English) :T. Miyamachi1), Y. Takahashi1), S. Nakashima1), Y. Takagi2,3), T. Yokoyama2,3), F. Komori1)
所属名(日本語) :1) 東京大学物性研究所, 2) 分子科学研究所, 3) 総合研究大学院大学
Affiliation (English) :1) Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
2) Institute for Molecular Science
3) The Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI)

1.概要(Summary)
反強磁性/強磁性超薄膜ヘテロ構造から構成される交換結合磁気デバイスの更なる高性能化のためには接合界面における交換結合エネルギーを増大させる必要がある。しかし、実験的に得られる交換結合エネルギーは理想界面の場合と比較して2桁程度小さいことが示されている。この原因として、接合界面での原子〜ナノスケールでの構造や電子・磁気状態の空間的乱れが挙げられるが、高い空間分解能で界面交換結合状態を直接観測できる実験手法の欠如からその詳細は殆どわかっていない。これまでに我々は反強磁性Mn超薄膜/強磁性Fe超薄膜ヘテロ構造の走査トンネル顕微鏡(STM)による構造観察および埋もれた界面の電子・磁気状態を元素選択的に議論可能な放射光X線吸収分光/X線磁気円二色性(XAS/XMCD)測定を行い、反強磁性/強磁性超薄膜ヘテロ構造の磁気特性が界面数原子層の合金化によって大きく影響を受けることを明らかにした。本研究では強磁性Fe超薄膜上に反強磁性Mn超薄膜を低温成長させて拡散を抑制することで、界面における合金化の有無が反強磁性/強磁性超薄膜ヘテロ構造界面に誘起される交換結合特性に与える影響を明らかにすることを試みた。

2.実験(Experimental)
測定はUVSOR BL4BのXAS/XMCD装置を用いて全電子収量法にて行った(試料温度80 K、印加磁場0-5 T)。反強磁性Mn超薄膜/強磁性Fe超薄膜ヘテロ構造はCu(001)基板上に室温成長した強磁性Fe超薄膜に反強磁性Mn超薄膜を低温成長(約100 K)させて作製した(0-5原子層)。XMCDスペクトル(μ+ – μ–)は円偏光ヘリシティと試料スピンが平行/反平行(μ+/μ–)なXASスペクトルの差分により得た。面内(θ = 55°)および面直(θ = 0°)配置でXAS/XMCD測定を行い、反強磁性Mn超薄膜を室温成長させた場合と比較することにより、界面合金層がMn/Fe超薄膜ヘテロ構造の磁気特性(容易磁化方向、磁気モーメント)に及ぼす影響を調べた。θは試料表面のノーマル方向と入射X線間の角度として定義している。

3.結果と考察(Results and Discussion)
低温成長させた反強磁性Mn超薄膜を低温成長させたMn/Fe超薄膜ヘテロ構造のXAS/XMCD測定の結果、Mn超薄膜の積層数が増えるにしたがって容易磁化方向が面直方向から面内方向に変化することがわかった。観測された傾向は室温成長の場合と同様だが、スピン再配列転移が起こり、かつ転移後の面直XMCDシグナル強度も大きかった。得られた結果は、反強磁性Mn超薄膜を低温成長させることにより界面合金化が抑制されて強磁性Fe超薄膜本来の面直磁気異方性が維持されていることを示唆している。

4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費 若手研究(A) 16H05963、基盤研究(B) 26287061、放送文化基金、島津科学技術振興財団および池谷科学技術振興財団の助成をうけて行われた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
・論文発表1件
・学会発表6件

6.関連特許(Patent)
なし。

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