利用報告書

異材接着材料の開発
吉澤快成
東京理科大学 工学部 工業化学科

課題番号 :S-16-NM-0023
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :異材接着材料の開発
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :吉澤快成
Username (English) :Kaisei Yoshizawa
所属名(日本語) :東京理科大学 工学部 工業化学科
Affiliation (English) :Department of Industrial Chemistry, Faculty of Engineering, Tokyo University of Science

1.概要(Summary)
有機天然物を利用した抗菌性材料開発の一貫として、申請者はこれまで植物性ポリフェノールの一種で抗菌性を持つタンニン酸の水酸基を部分的にウレタン化することにより形状記憶性のある高分子の開発に成功している。本申請ではさらに生体適合性の高いポリカプロラクトン系形状記憶ポリマーを開発すべく、タンニン酸に開環重合によってε―カプロラクトンを重合させたポリカプロラクトン(TA-PCL)を合成し、1HNMRスペクトル解析によって構造を評価した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
NMR装置(JEOL,ECS-400)

【実験方法】
タンニン酸とε-カプロラクトンを1:200をモル比で混合し、触媒としてジブチルすずジアセタートを加え加熱、撹拌した。撹拌子が回らないほど粘度が高くなった時点で加熱を止め、再沈殿により生成物を精製した後、吸引ろ過、真空乾燥を行い白色の粉体を得た。これを1HNMRを用いて末端基定量法にて構造を評価した。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
3.6ppm付近のピーク(A)と1.4ppm、1.6ppm、2.3ppm、4.1ppm付近のピーク(各c、b+d、a、e)のピークの比から、末端基定量法によりタンニン酸1分子あたり分子内の水酸基2、3箇所が重合度およそ90のε-カプロラクトンが開環重合した構造を持つことがわかった。タンニン酸の水酸基は分子内に25つあるが、各箇所に均等にε-カプロラクトンが重合しなかった理由としては立体障害による影響が考えられる。

Fig.1 合成したTA-PCL の1HNMRスペクトル

4.その他・特記事項(Others)
【今後の方針】
本反応により得られたTA-PCLに塩化アクリルを反応させた後、ラジカル開始剤を用いて複数のTA-PCLを物理架橋させて、高い生体適合性、抗菌性を持つ形状記憶ポリマーを合成していきたい。
【支援内容】
装置の操作法説明。
【参考文献】
M, Ebara et al, ADVANCED MATERIALS(2012), 24(2), 273-278

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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