利用報告書

相補的水素結合を用いた組織構造を有する有機薄膜太陽電池ドナー材料の開発
古川 晴一1), 安田 琢麿2)
1) 九州大学大学院工学府物質創造工学専攻, 2) 稲盛フロンティア研究センター

課題番号 :S-15-KU-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :相補的水素結合を用いた組織構造を有する有機薄膜太陽電池ドナー材料の開発
Program Title (English) :Organic Solar Cells Based on Controlled Structure with Complementary H-Bonding Molecules
利用者名(日本語) :古川 晴一1), 安田 琢麿2)
Username (English) :Seiichi Furukawa1), Takuma Yasuda2)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院工学府物質創造工学専攻, 2) 稲盛フロンティア研究センター
Affiliation (English) :1) Kyushu University, 2) INAMORI Frontier Research Center

1.概要(Summary )
相補的水素結合部位を有する有機半導体材料を開発し、有機薄膜太陽電池の光電変換材料へ応用する。水素結合によって分子が秩序構造を形成し、薄膜中において電荷輸送に有利なカラムナー構造を構築することによって、有機薄膜太陽電池の高性能化を目指した。

2.実験(Experimental)
目的となる有機化合物を合成し、GPCによって精製した。光電変換特性の評価を行う前に、超高速HPLC分離・分子構造分析システムによって材料の純度を確認することによって、不純物由来の性能の低下を排除した。得られた材料と、電子アクセプターであるPC61BMをクロロホルム溶媒に溶解させ、溶液をITO付きのガラス基板にスピンコートすることによって光電変換層を形成した。適切な熱処理を行った後、金属電極を蒸着によって積層することでデバイスを作製した。デバイスは100 mW/cm2, AM1.5Gの白色光源の下で電流-電圧特性を測定し、光電変換特性の評価を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
相補的な水素結合を形成可能なバルビツール酸誘導体である新規ドナー材料BA1(図1左)を合成した。光学物性および光電変換特性の評価を行った。BA1の溶液中での吸収スペクトルを測定したところ、分子の会合が強まる条件下で吸収ピークがレッドシフトした。また、スピンコートによって得られたBA1の薄膜も、分子孤立状態と比較してレッドシフトが観測された。このことから薄膜中においてもBA1分子が自己組織化し、J会合様に積層した組織構造を形成していることが明らかとなった。この結果を踏まえて、BA1薄膜に各種温度で熱処理を施したOSCデバイスを作製したところ、熱処理を行ったデバイスでは、未処理のデバイスに比べて1.3倍の光電流の向上が見られた。このことから、ドナー分子の自己組織化が光電変換特性の向上に寄与する端緒をつかむことができた。本系については、デバイスの最適化がまだ完了していないため、今後の最適化によりさらなる効率化を達成できると考えている。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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