利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0009
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :眼内に浸潤する炎症細胞・腫瘍細胞のラマン散乱光解析による鑑別
Program Title (English) :Discrimination between intraocular inflammatory cells and tumor cells using Raman Spectroscopy
利用者名(日本語) :岩﨑優子
Username (English) :Y. Iwasaki
所属名(日本語) :東京医科歯科大学眼科学教室
Affiliation (English) :Department of Ophthalmology and Visual science, Tokyo Medical and Dental University
1.概要(Summary )
眼内に炎症細胞や腫瘍細胞が浸潤すると、眼内が混濁し視力低下をきたす。本研究の目的は、眼内への浸潤が報告されている種々の細胞種(Tリンパ球、Bリンパ球、好中球、単球やリンパ腫細胞)の鑑別にラマン散乱光解析が有用であるかを検討し、将来ヒト眼内の硝子体混濁成分をin vivoにて非侵襲的に解析することの有用性を評価することである。2018年度は、リンパ腫セルラインと正常ボランティア由来のB細胞、活性化T細胞を測定し、ラマン散乱光による鑑別能を検討した。
2.実験(Experimental)
使用装置名:高速レーザーraman顕微鏡「RAMAN plus」
リンパ腫セルラインKML-1、正常ボランティア由来B細胞、T細胞を東京医科歯科大学で培養。サンプラテック社の定温輸送ボックスを用いて運搬した。
細胞はPBS(-)で懸濁しガラスボトムdishへ入れ、100倍水浸対物レンズを用いて観察およびラマン散乱光の測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
正常ボランティア3人(①、②、③)由来の正常B細胞とリンパ腫セルラインの測定データ3セット、正常ボランティア3人(①、②、③)由来の活性化T細胞とリンパ腫セルラインの測定データ3セットを得た。同日に測定されたラマンスペクトラムのうち、50%をランダムに選択しトレーニングデータとし、残りの50%をテストデータとして診断の正確性を評価した。この評価を100回繰りかえし、感度・特異度を算出した。結果、B細胞とリンパ腫細胞の鑑別能は感度平均96.4%(①;平均96.0%、②;平均97.0%、③;平均96.2%)、特異度平均94.7%(①; 平均95.6%、②由来; 91.7%、③由来; 96.9%)であった。活性化T細胞とリンパ腫細胞の鑑別能は感度平均93.7%(①;平均94.5%、②;平均91.8%、③;平均94.7%)、特異度平均73%(①; 平均68.5%、②;平均76.7%、③;平均73.8%)であった。このことから、ラマン散乱光解析は1細胞レベルの測定で悪性リンパ腫と正常リンパ球を鑑別でき、虚血性変化や間質変化を伴わない状況でも診断に有用であることが示された。今後眼内撮影機器の開発が望まれる。
4.その他・特記事項(Others)
NIMS服部晋也博士、竹村太郎博士に装置の使用法、トラブル対応に関し支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。