利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0021
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :硫化物ナノ粒子の改質と光触媒特性評価
Program Title (English) :Modification of metal sulfide nanoparticles and their photocatalytic properties
利用者名(日本語) :葛谷俊博1), 田中義紘2), 濱中 泰2)
Username (English) :T. Kuzuya1), Y. Tanaka2), Y. Hamanaka2)
所属名(日本語) :1) 室蘭工業大学, 2) 名古屋工業大学
Affiliation (English) :1) Muroran Inst. Tech., 2) Nagoya Inst. Tech.
1.概要(Summary )
Fig. 1 吸収スペクトルの変化 |
Fig. 2 吸光度の低下 |
半導体と貴金属からなる複合ナノ粒子を、光還元によって作製する手法を検証した。このような半導体-貴金属複合ナノ粒子は、貴金属ナノ粒子に特有の局在プラズモン共鳴の効果により、良好な光触媒性能を示すことが期待される。本研究では、イオン導電性を示す硫化物半導体のAgCuSナノ粒子に着目した。AgCuSナノ粒子に光照射をおこなって励起電子を作り出し、これによりナノ粒子表面に移動したAgイオンを還元して、複合ナノ粒子を生成させることを着想した。
2.実験(Experimental)
AgCuSナノ粒子を液相法により合成した。ナノ粒子の粒径は約8 nmであった。AgCuSナノ粒子を純水に分散させ、撹拌しながら、300Wのキセノンアークランプの光を照射した。一定時間おきにサンプリングし、吸収スペクトルを測定した。Agナノ粒子が生成すれば、波長400 nm付近に局在プラズモンの吸収が出現するので、生成を確認することができる。また、TEMを使ってナノ粒子を観察した。溶存酸素の影響を調べるため、溶媒の純水には、減圧して脱気したものと、酸素をバブリングしたものを用い比較した。吸収スペクトル測定にUV/VIS/NIR分光光度計を使用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1に、波長300~2000nmの光を1時間照射した場合の吸収スペクトルの時間変化を示す。照射0分では、AgCuSのバンド間遷移による吸収スペクトルが観測された。光照射を続けると、次第に吸光度が低下したが、吸収スペクトル形状には変化はみられず、Agナノ粒子の局在プラズモン共鳴ピークは現れなかった。純水を脱気してから溶媒とした場合でも、酸素バブリングしてから使用した場合でも、同様の結果であった。しかし、Fig. 2に示すように、吸光度が低下する速さに違いがみられた。酸素をバブリングした純水を使った場合に吸光度の低下が最も速く、脱気した純水を使った場合には最も遅い。吸光度の低下と同時に、ナノ粒子のサイズが減少した。この結果は、光励起によりAgCuSナノ粒子に生成した電子と正孔が、溶存酸素を使ってナノ粒子自身をAg+、Cu+、SO42-に分解する光酸化が生じたことを示唆している。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 佐藤健士朗、葛谷俊博、濱中 泰、古川慎悟、高瀬 舞、「AgCuS三元系ナノ粒子の合成とその光触媒能」、日本金属学会2020年秋季第167回講演大会、令和2年9月15日
(2) K. Sato, T. Kuzuya, Y. Hamanaka, S. Hirai, “Synthesis and analysis of highly monodispersed silver copper sulfide nanoparticles”, Materials Transactions, to be published.
6.関連特許(Patent)
なし