利用報告書

磁性半導体による半導体スピントロ二クスデバイスの開発とその評価
日髙志郎1), 内富直隆1)
1) 長岡技術科学大学

課題番号 :S-16-JI-0059 (S-15-JI-0031)
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :磁性半導体による半導体スピントロ二クスデバイスの開発とその評価
Program Title (English) :Development and evaluation of semiconductor spintronic devices by magnetic semiconductor
利用者名(日本語) :日髙志郎1), 内富直隆1)
Username (English) :S. Hidaka1), N. Uchiotomi1)
所属名(日本語) :1) 長岡技術科学大学
Affiliation (English) :1) Nagaoka University of Technology

1.概要(Summary )
光・電子集積回路の実現には、InP上に1.55 mの光を透過する光アイソレータを組み込むことが望まれる。我々はその候補となるZnSnAs2薄膜のInP(001)基板上への成膜技術を確立している。試料の磁性不純物濃度が希薄であること、また薄膜であることなどの理由で振動試料型磁力計(VSM)では磁化の検出が困難である。そこで本申請課題では、(Zn,Sn,Mn)As2薄膜にける磁化特性の膜厚依存性について、超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて調査した。
2.実験(Experimental)
(Zn,Sn,Mn)As2薄膜試料は分子線エピタキシーにより半絶縁性InP(001)基板上に20 nm厚のZnSnAs2緩衝層を介してした。Mn添加層の膜厚は166 nmである。またカチオンサイトにおけるMn濃度は4.5 cat%である。これらの試料は事前に高分解能X線回折(XRD)を用いてその構造評価を行なわれており、異相が検出限界以下であることが確認されている。この試料について磁化の温度依存性を測定した。磁化測定はゼロ磁場冷却(ZFC)および4 kOeの磁場中冷却(FC)の条件で行った。なお、どちらの磁化測定も降温する前に一度350 Kまで昇温した後に降温している。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図2にZFCとFCにおける磁化の温度依存性を示す。このようにZFCとFCとでは、低温になるにしたがい、その磁化の挙動に大きな違いがみられた。これは超常磁性が発現していることを強く示唆する結果である。InP(001)上(Zn,Sn,Mn)As2薄膜は、XRDおよび蛍光Xホログラフィーによる構造評価から閃亜鉛鉱型であることが確認されている。また、ZFCにおける磁化の温度依存性から、ブロッキング温度が~250 Kであることが明らかになった。これらを踏まえると室温以上のCurie温度を有する閃亜鉛鉱型MnAsのナノクラスターが形成されていると考えられる。典型的な超常磁性では、磁化が昇温にともない特定の温度で急峻に磁化が立ち上がるのに対し、(Zn,Sn,Mn)As2では、そのような振る舞いは観測されない。これは、異なる体積を有する閃亜鉛鉱型MnAsナノクラスターの混在を強く示唆するものである。加えて、磁気的パーコレーション濃度以上のMn濃度で発現する室温強磁性は、この閃亜鉛鉱型MnAsナノクラスターのパーコレーションによって引き起こされると推察される。以上のように、(Zn,Sn)As2を母材に選択すれば、ハーフメタルと予想される閃亜鉛鉱型MnAsのをスピントロニクス応用できる可能性が明らかにされた。
4.その他・特記事項(Others)
本課題は北陸先端科学技術大学院大学の赤堀誠志准教授より多大な技術支援を受けました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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