利用報告書
課題番号 :S-20-KU-0044(試行的利用採択No24)
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :磁性粒子を利用した多糖類の水中からの効率的な分離法の開発
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :岩田寛弘1)
Username (English) :Iwata Tomohiro1)
所属名(日本語) :1) 長岡技術科学大学
Affiliation (English) :1)Nagaoka University of Technology
1.概要(Summary )
多糖類の生産コストの低減や供給の安定化が求められている。本研究では希薄多糖水溶液からの効率的な多糖の回収法の確立を目指し,磁性粒子を利用した濃縮過程の導入効果について検討している。本申請課題では,ポリドーパミンを介してフェニルボロン酸を修飾した磁性粒子の修飾状態と水分散性やゼータ電位の関係について調査した。
2.実験(Experimental)
磁性粒子には戸田工業株式会社のMAT-305(平均粒径0.23 µm)を用いた。磁性粒子の修飾は以下の手順で行った。まず,メタノールおよび蒸留水で洗浄した磁性粒子5.0 gおよびドーパミン塩酸塩100 mgをTris-HCl緩衝液100 mLに加え,室温にて1時間振とうした。その後,磁力による修飾磁性粒子の回収を行い,メタノールおよび蒸留水による洗浄の後,真空乾燥を行うことでポリドーパミン修飾磁性粒子を得た。続いて,ポリドーパミン修飾磁性粒子1.0 gアミノフェニルボロン酸3.0 gをメタノール50 mLに加え,室温にて1時間振とうした。その後,磁力による修飾磁性粒子の回収を行い,メタノールおよび蒸留水による洗浄の後,真空乾燥を行うことでボロン酸修飾磁性粒子を得た。リン酸緩衝液(1.0 M pH 7.0)に分散させた磁性粒子の粒径およびゼータ電位は,粒径/ゼータ電位測定システム(大塚電子製ELSZ-2型,九州大学 分子・物質合成プラットフォームに依頼)により測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
本研究課題では,未修飾磁性粒子と修飾後の磁性粒子の緩衝液中での粒径および分散性について調査した。結果として,試料の凝集・沈殿の影響が大きく,正確なデータを得ることが困難であった。粒径に関しては,ポリマーによる修飾によって大きくなっている様子が観察できることを期待した。しかしながら,いずれの試料の場合も2~3 µmの粒子および測定上限に達している粒子のみが観察された。ゼータ電位につては,表面の化学的な状態変化にともない変化していることを期待したが,いずれも-20 mV程度の値が得られた。前述のように分散性が低いことから,ゼータ電位の値についても試料全体を示すものではないと予想される。以上の結果から,今回の測定では試料の状態が悪く,正確な測定値は得られていないものと考えられる。今後,試料の調製法について検討を重ねていくことで,より精度の高い測定値得られることが期待される。
4.その他・特記事項(Others)
大塚電子製ELSZ-2測定に当たっては九州大学 分子・物質合成プラットフォームの利光史行特任助教ならびに荒谷弘幸氏に大変お世話になり、感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし