利用報告書

磁性酸化物の磁気物性向上とその機構の解明
林兼輔(国立研究開発法人 物質材料研究機構)

課題番号 :S-20-MS-1005
利用形態 :機器センター施設利用(ナノテクノロジープラットフォーム)
利用課題名(日本語) :磁性酸化物の磁気物性向上とその機構の解明
Program Title (English) :Improvement of magnetic properties in magnetic oxides
利用者名(日本語) :林兼輔1)
Username (English) :Kensuke Hayashi1)
所属名(日本語) :1) 国立研究開発法人 物質材料研究機構
Affiliation (English) :1) National Institute for Materials Science

1.概要(Summary )
本研究では2つのテーマについて研究を行った。
カチオンコントロールによるCo3-XNiXO4の磁気物性向上とその機構の解明
Ti1-YCoYO2ナノシートの磁気物性の解明
①の研究に関しては、論文で報告を行っているので、ここでは現在行っている②の研究について報告を行う。
K0.7Ti1.73Li0.27O4(K-TiO2)は層状化合物と呼ばれる、Kの原子層とTiO2の原子層が重なりあっている化合物である。このTiO2の原子層は、K+をテトラブチルアミンイオン[N+(C4H9)4](TBA)のような嵩高いイオンで置換し振ることによって剥離させることが可能で、原子層の厚さと数マイクロの横幅をもつナノシートを作製する事が可能である。過去に、申請者が所属するNIMSにおいて、このTiO2ナノシートにCoをドープし、室温で強磁性を発現させたTi1-Y CoYO2ナノシートが作製された[1]。
強磁性のTi1-YCoYO2ナノシートを作製したものの、その磁性の起源は具体的に分かっておらず、その起源の解明が本研究の研究目的である。
具体的には分子研のSQUIDを用いて0 K付近の自発磁化を測定し、理論計算から求められている磁化と比較を行い、Ti1-YCoYO2ナノシートの磁気物性の起源に迫る。
2.実験(Experimental)
Ti1-YCoYO2ナノシートの前駆体であるK-Ti1-YCoYO2はセラミックス法によって合成し、前駆体とTBAを混ぜ合わせて機械振りを行うことでTi1-YCoYO2ナノシートを作製した。
 K-Ti1-YCoYO2とTi1-YCoYO2ナノシートの結晶構造はXRDにより測定し、EDSにより組成分析を行った。Ti1-YCoYO2ナノシートの磁気物性に関しては分子研の超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて、M-H loopを測定し、飽和磁化を求めた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 XRDにより作製された試料が単相で、先行研究[1]と同様な格子定数の膨張を確認した。
SQUIDを用いて5 Kと300 Kで測定したTi0.8Co0.2O2ナノシートのM-H loopを図に示す。図(a)から分かるように、5 Kにおいても強磁性を示さなかった。この結果は先行研究と大きく異なり、その原因を解明するために、現在XPSによるCoイオンのイオン状態の確認を行う事を計画している。強磁性状態のTi0.8Co0.2O2ナノシートXPSの結果はすでに報告されており、その結果と本研究の結果を比較することでイオン状態から磁性の起源を解明する。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献:[1] M. Osada, et al., Phys. Rev. B 73, 153301 (2006).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Hayashi, K. Yamada, and M. Shima J. Magn. Magn. Mater. 519 167479 (2021).
6.関連特許(Patent)
無し

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