利用報告書

積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗劣化メカニズムの解明
鈴木 哲男
エバープラスマテリアル株式会社

課題番号 :S-16-CT-0029
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗劣化メカニズムの解明
Program Title (English) :Clarification of degradation mechanism of insulation resistance for
multilayer ceramic capacitor
利用者名(日本語) :鈴木 哲男
Username (English) :Tetsuo Suzuki
所属名(日本語) :エバープラスマテリアル株式会社
Affiliation (English) :Everplus Material Co., Ltd.

1.概要(Summary)
弊社では、事業の1つとして積層セラミックコンデンサ(以下MLCC)の製品開発を行っている。開発する製品には、所望の電気特性と高信頼性が必要とされる。高信頼性は高温負荷における絶縁抵抗の劣化を抑制することが必要であるが、劣化メカニズムは複雑なため、詳細な分析無くしてその解明は困難である。今回、あるMLCC開発サンプル品の内部に用いるNi電極組成の変更により、絶縁抵抗の劣化が抑制された。要因調査として、千歳科学技術大学保有のFE-SEMを用いた変更前後の開発サンプル品の断面観察と、EDSを用いた元素分析を行った。
2.実験(Experimental)
チタン酸バリウム粉末に各種添加物粉末を微量加え、混合して作製した誘電体材料をシート状に成形した。その上にNi電極ペーストを印刷後、積層したものを所定の温度で焼成し、MLCC開発サンプルを作成した。Ni電極ペーストは組成の異なるA、Bの2種類を用い、それぞれを用いて作製したMLCC開発サンプルをサンプルA、Bとした。ペーストAは元素1を含有せず、ペーストBは含有する。また、サンプルAよりBの方が、絶縁抵抗の劣化を抑制でき、良好な結果であることは既に確認されている。
サンプルA、BをCPで断面加工し、千歳科学技術大学保有のFE-SEM(日本電子 JSM-7800F)を用い、断面観察とEDSによる元素分析を行なった。結果、図1のようにサンプルAには2次相bが、サンプルBにはNi電極部近傍に二次相aが偏在していることが判明した。

図1 サンプル断面の構成
3.結果と考察(Results and Discussion)
EDSによる元素マッピングの結果を図2に示す。図2より以下のことが判明した。
・2次相aには元素1と誘電体材料に添加物粉末として用いた元素2が偏在している。
・2次相bにはNiと元素2が偏在している。
以上より、誘電体部のNi並びに元素2の偏在と絶縁抵抗の劣化との関係性が示唆された。また、元素1と2の偏在がNiの拡散を抑制することにより、信頼性が改善している可能性がある。引き続き継続検討を進めたい。

図2 元素マッピングの結果
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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