利用報告書

窒素の活性化を目的とした新規バナジウム-窒素錯体の合成と構造
小久保佳亮1), 梶田裕二2)
1) 愛知工業大学大学院工学研究科, 2) 愛知工業大学工学部応用化学科

課題番号                :S-19-NI-0022

利用形態                :共同研究

利用課題名(日本語)    :窒素の活性化を目的とした新規バナジウム-窒素錯体の合成と構造

Program Title (English) :Syntheses and crystal structures of novel divanadium-dinitrogen complexes

利用者名(日本語)      :小久保佳亮1), 梶田裕二2)

Username (English)     :Y. Kokubo1), Y. Kajita2)

所属名(日本語)        :1) 愛知工業大学大学院工学研究科, 2) 愛知工業大学工学部応用化学科

Affiliation (English)  :1) Graduate School of Engineering, Aichi Institute of Technology,

2) Department Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Aichi Institute of Technology

 

 

1.概要(Summary )

当研究室では、常温常圧下、水をプロトン源とする新しい窒素固定法の開発に向けた金属錯体触媒の合成を行なっており、これまでに、トリアミドアミン配位子をもつバナジウム(III)錯体が、還元剤を必要とせずに窒素を配位させることができることを見出している。今回は、これまでに報告している二核バナジウム窒素錯体に加え、末端置換基を変更した複数の配位子を用いて、一連のバナジウム-窒素錯体の合成に成功したので報告する。

2.実験(Experimental)

用いた配位子を図1に示した。これらの配位子を、n-ブチルリチウム、VCl3THF3とそれぞれ反応させ、窒素錯体をそれぞれ合成した(R = iBu (1), EtBu (2), Bn (3), iPr2Bn (4))。窒素錯体14については、単結晶X線結晶構造解析、NMRスペクトル、元素分析、共鳴ラマンスペクトルを用いて全て同定した。またこれらの窒素錯体を用いて架橋窒素のプロトン化を行い、その生成物についてNMRスペクトルを用いて同定・定量を行なった。

図1.

3.結果と考察(Results and Discussion)

得られた錯体14の結晶構造を全て明らかにした。その配位構造は全て三方両錐構造であり、架橋配位しているN2配位子のN-N間距離は1: 1.203(4) Å, 2: 1.221(4) Å, 3: 1.220(5)および1.220(8) Å, 4: 1.190(4) Åであった。これらの窒素錯体を用いて架橋窒素のプロトン化を行なったところ、錯体3をカリウムナフタレニド、ルチジニウムトリフレートと反応させた時アンモニアを収率191%で得た。これはわずかに触媒的に反応が進行していることを示している。また、この反応の生成物としてヒドラジンは検出されなかった。

4.その他・特記事項(Others)

本研究における結晶構造解析はナノプラットフォームを利用することで行うことができた。測定にあたり、名古屋工業大学の小澤智宏教授にご指導いただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) Y. Kokubo, Y. Wasada-Tsutsui, S. Yomura, S. Yanagisawa, M. Kubo, S. Kugimiya, Y. Kajita, T. Ozawa, H. Masuda “Syntheses, Charactertizations, and Crystal Structures of Dinitrogen-Divanadium Complexes Bearing Triamidoamine Ligands” Eur. J. Inorg. Chem. in press (2019).

(2) Yoshiaki Kokubo, Kazuki Tsuzuki, Yuji Kajita, 第29回金属の関与する生体関連反応シンポジウム(令和元年5月31日)

(3) 小久保佳亮・梶田裕二 錯体化学会第69回討論会(令和元年9月23日)

(4) 山本千晶・梶田裕二 錯体化学会第69回討論会(令和元年9月23日)

(5) 小久保佳亮・梶田裕二 日本化学会第100春季年会(令和2年3月22日)

6.関連特許(Patent)

なし

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