利用報告書

糖脂質含有二重膜表面で誘起されるアミロイドβ会合状態の固体NMRを用いた 構造解析
西村 勝之1)、矢木 真穂1,2,3)、矢木 宏和3)、加藤 晃一1,2,3)
1)分子科学研究所,2)生命創成探求センター, 3)名古屋市立大学

課題番号 :S-18-MS-1055
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :糖脂質含有二重膜表面で誘起されるアミロイドβ会合状態の固体NMRを用いた
構造解析
Program Title (English) :Structural characterization of amyloid β oligomer induced on lipid bilayers
consisting of glycolipid by means of solid-state NMR
利用者名(日本語) :西村 勝之1)、矢木 真穂1,2,3)、矢木 宏和3)、加藤 晃一1,2,3)
Username (English) :Katsuyuki Nishimura1), Maho Yagi1,2,3), Hirokazu Yagi3), Koichi Kato1,2,3)
所属名(日本語) :1)分子科学研究所,2)生命創成探求センター, 3)名古屋市立大学
Affiliation (English) :1)Institute for Molecular Science, 2)Exploratory Research Center on Life
and Living Systems ,3) Nagoya City University

1.概要(Summary)
アミロイドβ(Aβ)ペプチドはアルツハイマー病の原因因子と考えられ、凝集して不溶性のアミロイド線維を形成する。近年、この線維化が神経細胞膜表面で促進されることが報告されている。申請者らはこれまで、一般的なモデル中性脂質膜、1,2 dimyristoryl-sn-glycero-3-phosphocholine(DMPC)上で誘起された Aβ40会合中間体の立体構造を多次元固体NMRによる解析から決定することに成功している。
 本研究では、モデル細胞膜として、Aβと特異的な結合能を有する糖鎖脂質GM1を含有した脂質二重膜上で誘起されるAβ会合中間体を補足し、その分子構造を決定することにより、脂質膜上で誘起されるAβ線維化の分子機構を解明することを目的としている。今回、GM1およびDMPCからなるベシクル上で誘起されたAβ会合体の分子構造を2次元固体NMRによる解析から決定することを試みた。
2.実験(Experimental)
GM1、およびDMPCからなるベシクルを調製し、スピンラベルをC末端に導入した5%非標識Aβ40と13C、15N安定同位体全標識Aβ(1-40)を95%混合した試料、およびアミノ酸種特異的に安定同位体標識した複数の試料を調製したプロテオリポソームを超遠心により遠心沈降させ、直ちに凍結乾燥することにより、脂質膜表面に結合したAβ会合体を補足した。全ての固体NMR測定は、分子科学研究所 機器センター所有のBruker社製Avance 600分光器、および2.5 mm 1H-13C-15N 3重共鳴プローブを用いて行った。13C同種核相関固体NMR dipolar assisted rotational resonance(DARR)法を用いて10 msの混合時間で全ての測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
一連の13C DARR測定の解析から、昨年度までの解析では信号の重複が激しく一義的な帰属が困難であったVal残基を中心に、明瞭な信号帰属が実現した。また、プロセッシング条件を最適化し、これまで測定を完了している実験を含めて、信号帰属を再検討した。その結果、最終的にVal12からVal40までの残基の信号帰属に成功した。この帰属に基づき得られた化学シフト値を用いてTALOS-Nで二次構造解析を行ったところ、2-3のβシート構造がランダムコイルにより繋がれた構造を有することが判明した。
 また、スピン標識試料のparamagnetic relaxation enhancement(PRE)の解析からC末端の常磁性中心がSer26残基の近隣に存在することが判明した。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1.矢木 真穂、西村 勝之、加藤 晃一、”固体NMRによるGM1ガングリオシド膜上におけるアミロイドβの構造解析”、日本薬学会第139回年会、千葉、幕張メッセ、ホテルニューオータニ幕張、2019.3.20.
2.矢木 真穂、加藤 晃一、西村 勝之、”固体NMRを用いたガングリオシド膜上におけるアミロイドβの構造解析”、第57回NMR討論会、札幌、札幌コンベンションセンター2018.9.18
6.関連特許(Patent)
なし

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