利用報告書
課題番号 :S-19-JI-0028
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :糖鎖高分子ライブラリーの金基板上における分光学的解析
Program Title (English) :Spectroscopy analysis of glycopolymer library on gold substrate
利用者名(日本語) :木元優里、三浦佳子
Username (English) :Yuri Kimoto, Yoshiko Miura
所属名(日本語) :九州大学大学院工学研究院化学工学部門
Affiliation (English) :Department of Chemical Enginnering, Graduate School of Engineering, Kyushu University
1.概要(Summary )
オリゴ糖鎖は重要な生理活性を担っており、創薬やバイオマテリアルの開発の上で重要な役割がある。しかしながら、オリゴ糖はその合成が保護基の化学を含む、煩雑な合成によることから、大量に取得することは難しい。一方で、我々は糖鎖の機能を考えて、オリゴ糖の構造を機能ごとに分割、再構築できると考えた、糖鎖モジュール法について検討している。この方法では、糖鎖を機能単位で分割した上で、側鎖官能基に結合させて、重合することで、難しいグリコシル化反応を経ることなく、オリゴ糖鎖と同じ機能を発現させることが可能である。1側鎖に結合させる糖鎖やそのほかの官能基の組み合わせをうまく選ぶことで種々の生理活性糖鎖を代替する
一方で、オリゴ糖と同じような機能を発現させる側鎖の組み合わせは簡単に見つけることはできないため、様々な組み合わせを試して検討することが必要である。本研究では、ガラクトースと疎水性基の組み合わせによって、ガングリオシドGM1と同じような機能の発現を目指した。種々の疎水性基を組み合わせた高分子を合成した上で、金基板上に結合させて、GM1結合性のタンパク質であるコレラ毒素Bサブユニットを作用させて、表面プラズモンイメージングにて、網羅的な解析を行った。
2.実験(Experimental)
ガラクトースを側鎖に有するアクリルアミド型モノマー、疎水性官能基を持つter-ブチル、フェニル、シクロヘキサンなどの疎水性官能基を有するアクリルアミドとの共重合体を各種合成した(Scheme1)。高分子末端のチオール基によって、金基板を修飾した。金の修飾については、X線光電子分光(XPS、AXIS-ultra, Shimazu/Kratos)によって解析した。
得られた高分子修飾基板とタンパク質の相互作用については、表面プラズモンイメージング装置(MultiSPRinter, Toyobo Co., Ltd)によって測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
1)糖鎖高分子の合成
ポリアクリルアミド型の糖鎖高分子については、RAFTリビングラジカル重合法を用いて合成し、全てMw/Mnが1.5以下の狭い分子量分布で得ることができた。合計で10種類の糖鎖高分子を合成した。高分子の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーによって測定した。
Scheme 1 ガラクトースを含む糖鎖高分子の合成方法
2)糖鎖高分子の金基板への固定化
糖鎖高分子を金基板とインキュベートして固定化した。XPSによって、C(1s)解析したところ、C=O,C-Oといったピークが、C-C, C-Hのピークのショルダーとして観察されたことから、糖鎖高分子の固定化を確認した。また、表面の元素分析によってもO、N原子が表面で増加したことから、糖鎖高分子が固定化されたことがわかった(Figure 1)。
3)糖鎖高分子のタンパク質との分析
糖鎖高分子と、糖認識タンパク質(RCA120, PNA), GM1認識タンパク質(コレラ毒素Bサブユニット)につい
Figure 1 糖鎖高分子固定化金基板のXPS、C(1s)スペクトル。
て、SPRによって解析した。ガラクトースのない高分子に対しては、これらのタンパク質は全て結合を示さなかった。一方で、ガラクトースがある高分子に対してはコレラのタンパク質は全て結合が観測され、ガラクトースがGM1の模倣のための必須要素であることがわかった (Figure 2)。
Figure 2 糖鎖高分子固定化基板のコレラ毒素BサブユニットとのSPRによる結合解析
次に、疎水性基の影響について調べた。疎水性基を有する高分子とタンパク質類との相互作用を調べたところ、コレラ毒素Bサブユニットとの結合のみが、有意に増強されることがわかった。その疎水性基については、疎水度の指標であるLogPが大きいほど、コレラ毒素への結合が強いことがわかった。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1.M. Nagao, Y. Kurebayashi, H. Seto, T. Suzuki, Y. Hoshino, Y. Miura, Polymer Chem. 2016, 7, 5920-2924.
2. Y. Terada, Y. Hoshino, Y. Miura, Chemstry-Asian J, 2019, 14, 1021-1027.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Y. Kimoto, Y. Terada, Y. Hoshino, Y. Miura, Screening of a Glycopolymer Library of GM1 Mimics Containing Hydrophobic Units Using Surface Plasmon Resonance Imaging, ACS Omega, 2019, 4, 20690-20696.
(2)Y.Kimoto,Y.Terada,Y.Hoshino,Y.Miura,Screening Glycopolymer with Hydrophobic Groups for Detection of Cholera Toxin,Pacific polymer Conference,2019年12月9日
(3) 木元 優里、安藝 翔馬、星野 友、三浦 佳子「PET-RAFT重合を用いたコレラ毒素認識糖鎖高分子のためのライブラリスクリーニングシステムの開発」、第68回高分子討論会、2019年9月25日
(4) 木元 優里、寺田 侑平、星野 友、三浦 佳子「コレラ毒素を認識する糖鎖高分子のスクリーニング解析」ポスター発表、第56回化学関連支部合同九州大会、2019年7月16日
6.関連特許(Patent)
なし







