利用報告書

細胞内送達ナノキャリア開発に関する研究
佐々木隆浩(北海道医療大学薬学部)

課題番号 :S-20-CT-0101
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :細胞内送達ナノキャリア開発に関する研究
Program Title (English) :Development of nano-carriers for intracellular delivery
利用者名(日本語) :佐々木 隆浩
Username (English) :T. Sasaki
所属名(日本語) :北海道医療大学薬学部
Affiliation (English) :School of Pharmaceutical Sciences, Health Scineces University of Hokkaido

1.概要(Summary )
ナノ粒子表面に修飾する配位子(一次修飾剤)は、ナノ粒子に分散性と分子修飾の足掛かりを与える。また、ナノ粒子表面に一次修飾剤を介して化学修飾した機能性分子の安定な保持は、一次修飾剤の配位安定性に依存する。したがって、ナノ粒子をベースとした細胞内探索ナノ材料の開発において、高いナノ粒子分散性と配位安定性を有する一次修飾剤が必要となる。本研究では、二つの化合物群(カテコール配位型(3化合物)、酸性官能基配位型(6化合物))から分散性と配位安定性を兼ね備えた一次修飾剤を探索した。
2.実験(Experimental)
既に確立した合成法により得たオレイン酸修飾磁性ナノ粒子(MNP@OA)を種々の一次修飾剤にて配位子交換した。配位子交換は、o-DB/DMF、THFおよび水/THF中でそれぞれ行った。得られたMNPの水への分散性および配位安定性を評価した。併せて、配位子交換反応後のナノ粒子形状を透過型電子顕微鏡(TEM, H-7600/HITACHI、公立千歳科学技術大学登録装置)にて観察した。配位安定性評価のための試験法は前年度に確立した方法を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
一次修飾剤として、カテコール配位型分子群および酸性官能基配位型分子群を修飾したMNPの水への分散性を評価した結果、3,4-dihydrophenylacetic acid (DHPAA)および3-phosphonopropionic acid (PPA)を修飾したMNP(MNP@DHPAA、@PPA)を用いて、塩基性とした水/THF溶媒で配位子交換した場合に、分散性のよいMNPが得られた。酸性官能基配位型分子の場合、特定の条件ではMNPのエッチングが生じていびつな形状となった(図1)。塩基性条件ではエッチングは生じず、球形状が保持された(図2)。併せて、これらのMNPの配位安定性は良好で、DHPAAおよびPPAは細胞内探索ナノ材料のための一次修飾剤として有望であることが明らかとなった。今後は、これらのMNPを用いたナノ材料開発を進めていく予定である。

図1 a) MNP@OAおよびb) 配位子交換によりエッチングされたMNPのTEM像

図2 a) MNP@DHPAAおよびb) MNP@PPAのTEM像
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究の実施にあたり、TEMの適切な保守管理をしていただきました公立千歳科学技術大学の河野敬一先生、オラフ・カートハウス先生、技術補助スタッフの方々に感謝いたします。また本研究は、JSPS科研費JP20K05284の助成を受け実施しました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
6.関連特許(Patent)
5.6.ともになし。

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