利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0078
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :細胞骨格タンパク質の透過型電子顕微鏡観察
Program Title (English) :Observation of Cytoskeletal Proteins by TEM
利用者名(日本語) :志賀美由貴1), 松井一史1), 德樂清孝1)
Username (English) :M. Shiga1), K. Matsui1), K. Tokuraku1)
所属名(日本語) :1) 室蘭工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Division of Sustainable and Environmental Engineering, Muroran Institute of Technology
1.概要(Summary)
微小管やアクチンフィラメントなどの細胞骨格タンパク質は生命活動に必須の様々な細胞機能に関与している。我々は、微小管の重合を促進し形成した微小管を安定化する機能をもつ微小管結合タンパク質(MAP)が、細胞内と同様にアクチンフィラメントが共存する中でどのように微小管の重合を促進するのか主に蛍光顕微鏡観察や共沈法を用いて解析を進めてきた。今回、この解析を透過型電子顕微鏡で可能かどうか検討することを目的とした。
2.実験(Experimental)
マイクロチューブ内でアクチンフィラメントとMAP2および重合前のチューブリンを混合し、37 ℃で1時間インキュベートした。試料溶液を膜張グリッド上に載せ、10分間インキュベートした後に水滴をろ紙で吸い、電顕用2.5%グルタルアルデヒドを含む微小管重合bufferにのせて37 ℃で5分間程度静置し、試料分子を膜面に固定した。グリッド上に試料溶液とほぼ同量の1%リンタングステン酸をたらして試料液を洗い落とした。パラフィルム上に1%リンタングステン酸を2つ用意し、試料側が水滴に接するように被せ、2つのリンタングステン酸水滴にそれぞれ1秒位ずつ接触させた。濾紙で余剰の染色剤を吸収し、10分間自然乾燥させ、透過型電子顕微鏡(日立、H-7600)で観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
コントロールとして、アクチンフィラメントおよび微小管を観察した。まず2%リンタングステン酸を用いて染色したところ、リンタングステン酸の結晶が観察され、アクチンフィラメントと微小管の観察には適さなかった。そこで、1%リンタングステン酸に希釈して染色したところ、アクチンフィラメント、微小管とも観察できた(図1 FA、MT)。また、アクチンフィラメントにMAP2を添加することでアクチンフィラメントが束化する様子が観察された(図1 FA-MAP2)。最後に、アクチンフィラメントが共存する中でMAP2によるチューブリン重合促進の様子を観察したところ、アクチンフィラメントの束に沿った微小管の形成が観察された(図1 FA-Tb-MAP2)。以上の結果は、日本動物学会第87回年会でデータの一部として発表された(1)。
図1 透過型顕微鏡画像。(FA)アクチンフィラメントのみ、(MT)微小管のみ、(FA-MAP2)アクチンフィラメントとMAP2、(FA-Tb-MAP2)アクチンフィラメントとMAP2および未重合のチューブリンを加えたもの。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究の遂行にあたりまして、千歳科学技術大学の河野敬一先生には観察手法およびサンプル調製法について、また技術員の平井郁乃様には透過型電子顕微鏡の操作方法についてご指導いただきました。本研究はJSPS科研費JP16K14704の助成を受けたものです。この場を借りて感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 志賀美由貴, 松井一史, 小谷享, 徳楽清孝, 日本動物学会第87回年会(沖縄)平成28年11月18日.







