利用報告書

繊維間架橋型バクテリアセルロースの創製
沼田ゆかり(小樽商科大学)

課題番号 :S-20-CT-0031
利用形態 :技術補助
利用課題名(日本語) :繊維間架橋型バクテリアセルロースの創製
Program Title (English) :Preparation of interfiber cross-linking bacterial cellulose
利用者名(日本語) :沼田ゆかり
Username (English) :Y. Numata
所属名(日本語) :小樽商科大学
Affiliation (English) :Otaru University of Commerce

1.概要(Summary )
 バクテリアセルロース(BC)ペリクルは微細なセルロース繊維が三次元網目構造を形成しており、微生物によって産生される。ペリクルの物性改質を目的として複合体化が数多く報告されている。本研究課題ではセルロース繊維間に架橋構造を導入することで複合体化し、かつ繊維形態を保持したペリクルを調製した。

2.実験(Experimental)
 BCペリクル内にポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(PMVE/MA)とポリエチレングリコール(PEG)を導入し、PTFE板にペリクルをのせる、またはガラス板ではさむの各条件に対して80℃で24時間加熱し架橋構造を合成した。洗浄によって再膨潤したBC-PMVE/MA-PEGの水をエタノールで置換した後、さらにt-ブチルアルコールで置換し凍結乾燥した。オートファインコーターで白金をコーティングしたサンプルの表面を電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察した。
利用装置:
・オートファインコーター, JEOL JEC-3000FC
・FE-SEM, JEOL JSM-7800F

3.結果と考察(Results and Discussion)
 各条件で得られたペリクルはフーリエ変換赤外分光スペクトルからエステル化により架橋構造が形成され、複合体化していることが示された。次に繊維形態を確認するためペリクル表面をFE-SEMで観察した。PTFE板にのせて合成したペリクルは、常に空気に接していた面の繊維がPMVE/MA-PEGで完全に覆われていることが明らかになった(図1a)。一方、ガラス板にはさんで合成した場合はペリクル表面の繊維形態に違いがみられた(図1b)。BCペリクルと比べ繊維間にPMVE/MA-PEGが入り込み、繊維が太くなっている箇所があるものの、繊維形態を保っていることが明らかになった。以上の結果から、ガラス板ではさんで合成することで繊維形態を保持し、繊維間に架橋構造を導入したBCペリクルの創製に成功した。今後は、PMVE/MA-PEG導入率を変えたサンプルを調製し、得られるペリクルの物性等の詳細を明らかにする。

図1 BC-PMVE/MA-PEG表面のSEM像
a) ペリクルをPTFE板にのせて合成
b) ペリクルをガラス板にはさんで合成

4.その他・特記事項(Others)
<謝辞>
FE-SEMによる観察で技術補助いただいた公立千歳科学技術大学の伊勢崎政美氏、大滝晋平氏に感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
 なし。

6.関連特許(Patent)
 なし。

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