利用報告書

羽毛の微細構造のSEM観察から高撥水性構造の探索:特徴的な空隙サイズの決定 
眞山博幸1)
1) 旭川医科大学医学部化学

課題番号 :S-16-CT-0004
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :羽毛の微細構造のSEM観察から高撥水性構造の探索:特徴的な空隙サイズの決定
Program Title (English) :Investigation of hierarchical structure of feather by SEM observation
利用者名(日本語) :眞山博幸1)
Username (English) :MAYAMA Hiroyuki1)
所属名(日本語) :1) 旭川医科大学医学部化学
Affiliation (English) :1) Department of Chemistry, Asahikawa Medical University

1.概要(Summary )
羽毛は羽軸、羽枝、羽小枝からなる階層的な構造をしており、飛翔性能だけではなく断熱性、力学的強度を兼ね備えている高機能材料である。特に、羽毛の超撥水性はよく調べられている。これまでの研究から、小羽枝によって作り出された空隙が、静的な濡れ状態においてCassie-Baxter状態と呼ばれる超撥水状態を実現していることが分かっている。
一方で、本研究で着目している羽毛の動的な濡れの性質についてはまったく理解されていない。これは鳥が水浴びするときに水面に羽根を打ち付けた瞬間に水が浸み込むかどうかという問題と直結しており、動物の表面の濡れ性が行動様式と密接に関係している。
2.実験(Experimental)
羽毛には文鳥(Padda oryzivora)の初列風切羽根を用いた。観察には千歳科学技術大学・分子物質合成プラットフォーム設置の電界放出形走査電子顕微鏡FE-SEM(日本電子社製 JSM-7800F)を用いた。また、北海道立総合研究機構工業試験場において水銀圧入法で羽毛の細孔サイズ分布測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.1は羽毛のSEM観察像である。小羽枝がシダ状に枝状に生えた羽枝が隣接している。同じ羽枝上に生えている小羽枝同士と隣の羽枝上に生えている小羽枝同士が重なり合っている状態が観察されている。また、小羽枝間の大まかな隙間は1 m程度か、それよりも小さいスケールであり、水銀圧入法の測定結果もよい一致を示した。
求められた特徴的な空隙のサイズから、羽毛に水が浸み込むためのラプラス圧を求めることができる。今後は求められたラプラス圧と羽ばたきで水面に打ち付けられる速度から求められる圧力を比較し、羽毛の動的な濡れの性質を詳しく調べる予定である。

4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
1) S. Srinivasan et al., J. Royal Soc. Interface, 11, 20140287 (2014).
・謝辞
本研究の遂行にあたり、千歳科学技術大学の河野敬一先生、山崎郁乃様に電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM,日本電子社製 JSM-7800F)の操作方法や試料の調製についてご指導頂きました。サンプルは北海道大学大学院理学研究院・准教授・相馬雅代先生にご提供いただきました。水銀圧入測定による細孔サイズ分布は北海道立総合研究機構工業試験場・松嶋景一郎様に測定していただきました。この場を借りて感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.